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第20話
「で、お前はどんな生活をしてきたんだ?」
俺についての話は、荷物を片付け終えた夕方、プールサイドのテラス席でビールを飲みながら始まった。
「俺は別に普通だよ」
改まってそんなことも聞かれたこともなかったから、とりあえずそう答える。
「普通に大学出て仕事してた」
人に過去の話をすることなんてあまりない。
「何の仕事してたんだ?」
夕日がまったりと落ちて景色がピンク色になるのが心地よくて、つい話してしまう。
「ビジネスマンだよ、普通の」
彼はうんうんと頷いていた。
「たまに仕事するから思うんだが、日本のビジネスマンってのは、独特だよな」
「やっぱ海外から見るとそうなんだ?」
「ああ、そのつもりはないんだろうが、結果的に日本の尺度で海外を判断しがちなところがある。謙虚すぎるんだろうな」
「なるほどね。俺も独特の世界すぎて馴染めなくてすぐ辞めたんだ」
酒が進むから話も進む。ドイツビール美味い。ウインナーとかつまみに持ってくるもんだから余計美味い。
「今は何の仕事をしている?」
「フリーで翻訳とか通訳とかやってる」
「ほぉ、どうりで喋れるわけだ。そりゃあいいな」
「うん、ビジネスマンよりも俺には合ってるかな」
なのに海外にあんまり行かないっていう。別にいいんだ。それで飯食えてるし。
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