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第26話
「この眺めもまた……」
海の上には、影が出来るほど明るい満月が浮かんでいる。
遮るものは何もない。望月の歌じゃなくても、この景色が私物なんじゃないかって気分になる。
それをまた、ビールを引っ掛けながら見るのが、本当最高でして。
部屋のテラスの柵に腕を預けて眺める。海風が少し肌寒いくらい。
食後に一休みして、只今の時刻午後11時すぎ。
この頃には夕方の動揺もすっかり落ち着いていた。
シャワーも浴びて、Tシャツとボクサーパンツ一丁。こんなところでこんな格好でビール飲むのも申し訳ないと思いながら、優しい夜の景色に身を委ねた。
「いつまでも見てられる」
もう一生夜でもいいくらい。
何のストレスもなく、心穏やかにいられるだろう。
直飲みしてた瓶ビールが空いた。夕方から何本酒飲んでんだろ。ミネラルウォーター1本挟んだだけで、あとはずっと酒かもしれない。
「さすがにそろそろやめるか」
ボソッと呟いたところで、背後から声をかけられる。
「ヘイ、今なんて言ったんだ?」
ご機嫌な彼だった。思えばこいつも同じくらい飲んでるような。
「んー、もう結構飲んだなーって」
「そうだな、お前結構酒強いんだな」
「強い方かもね。でもさすがに今日はもうやめとくわ」
「ああ、また体調崩してもよくないからな」
「ああ、うん」
夕方のことを言っているんだろう。
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