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第44話
奴がさっきキスしてきたのは、首筋、唇、喉。
「えーと、まず首筋はー……」
首筋のキスの意味は、執着。
「はーん」
わかる気がする。
続けて喉も見てみると。
喉は欲求。
「おもしれえなぁ」
ハハッと軽く笑ってしまった。そのまま彼と俺の関係を表してるような気がしてくる。
では、肝心の手首はというと。
欲望。
「………」
欲求とカブってない?大体意味似たり寄ったりじゃん。
ただ、言い得て妙というか、俺たちの関係において、欲望の全てが俺の手首に詰まっていることは間違いない。
少し楽しくなるんじゃないかしら、とシェフは言っていたけど、多少気分転換できた気はした。
「はーあ、頑張るか」
スマホを放り出し、自分の手首にキスする。
(早く良くなってくれ)
自分に願いながら目を閉じる。
そのままウトウトして、ソファで眠ってしまったのに気づいたのは、翌朝早くのことだった。
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