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第61話
「どうしたんだ? これじゃあ気に入らないか?」
「なんでもねーよ」
乙女かよ。
一瞬でも自分らしくないことを思ってしまったことを後悔した。
なんだか指がすうすうして、もどかしくて合掌するように手を握る。
「デザイン通りですごくいいと思う、可愛いよ」
気を取り直して、思ったままに感想を伝えた。彼はえへんと胸を張った。
「だろ、頑張ったんだぜ。全部丸く削るところからスタートだったからな」
「はぁー、マジか、すげぇな」
「宝石を樹脂で固めて、ダイヤモンドでコーティングしたんだ」
「ダイヤモンド!」
手に取って見せてもらう。空の色を反射して、ここの空気をそのまま詰め込んだみたいに、キラキラと輝いている。
「すげーなー、あのバカにはもったいねぇよ」
「ちゃんと箱に詰めて渡すからな。とりあえず完成品を見せたくて」
「え、この箱じゃないの?」
「これは適当な箱さ。ネックレス用にちゃんと作るよ」
どんだけ準備いいんだよ。しまいにその箱も手作りするとかいうので、また工房に篭ると言っていた。
宝石を削ることも出来てちゃんと箱も作れて、見てないからわからないけど、工房ってのは意外と本格的なものなのかもしれない。
話もひと段落したところで、ふと手首のことが気になって、あのさ、声を上げた。
「どうした?」
「手首がさ、なんか、大丈夫になってきたかも」
「え?」
「さっきキスされたとき、全然体震えなかった」
「本当か!」
彼の目が輝いた。
俺は自分の手首をさすりながら、軽く頷く。
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