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Ⅰ【荒城の月】 第3話

『奪え!!』 『奪って自由を勝ち取れ、Ωたちよ』 ネットのセキュリティをかいくぐり、全国のΩへ向け秘密裏に配信したメールに、Ωは立ち上がった。 α 恐怖の一日の幕開けである。 Ωたちは、自分を虐げてきた飼い主 α共を殺害した。 全国で殺人事件が大量発生する。 有差別大量殺人に、警察機構は麻痺。 (それもそうだろう) 人口の大多数はβだ。 αのみを狙った殺人である。本気でαを守るβはいない。 αは特権を利用して、散々甘い汁を吸ってきたのだから。 生命の危機に逼迫(ひっぱく)したα内閣は、遂に自衛隊を前身とする、大日本防衛軍の派遣を決定した。 2月14日 血のバレンタイン事件 ……後にこう呼ばれる、我が国の歴史で最も凄惨な無差別大量殺人が行われたのである。 全国各地に派遣された大日本防衛軍は、αの救出と保護を大義名分に掲げて、市民を巻き込んだ無差別虐殺を執行した。 大勢のβ、Ωが犠牲となった……… この事件を機に、社会の頂点に君臨していたαは孤立。 今や、この国にαを支持するΩはいない。βさえもαを見限った。 血のバレンタインを生き残ったΩは、自由と、殺したαの財産を手に入れた。 元々Ωには優秀な人材が多い。 αに見合う(ツガイ)に育成するために、英才教育を施されているからだ。 Ωの理解は早い。 次に何をすべきかが分かっている。 革命の火は上がった αの圧政に蜂起したΩに、αを見離したβが加わった。 αから奪った資金 βの技術と施設 両方が手に入った。 ………俺は組織した。 虐げられてきたΩを解放する、最強の武装軍団 最新鋭の新型ジェネラルによる、α専横からの解放を勝ち取る崇高なる騎士団 現日本国に於ける、十字軍ともいえる存在 Ω解放軍 その頂きに立つ統帥が俺だ。 つぅっと、風が氷の手を差し出して、頬を撫でて過ぎ去る。 (ゆえに) 見せてはいけない。 (この素顔を) 風が撫でた頬を、銀の仮面で覆う。 俺の顔には醜い傷が刻まれている。 この傷は……… 虐げられたΩの象徴であり、 傲慢なαの象徴だ。 (同情は要らない) 同情如きで集まる心は脆弱(ぜいじゃく)だ。 俺が欲しいのは、圧倒的な力 αを駆逐する強靭(きょうじん)な精神 αへの…… α専横を黙認してきた理不尽な世界への…… (怒り) 圧倒的な力で、排除する。 αに象徴される、世界の理不尽を! 滅べ!! この世のαよ 永久(とこしえ)の後悔に()ちろ! 絶望の末路を辿(たど)れ 貴様らを駆逐するまで、俺は仮面を被り続ける。 貴様らに刻まれた傷を、誰よりも深く心に刻むため…… 銀の仮面を………… (被り続ける) いつからか この姿を見た世の人間たちは、畏怖を込めて、俺をこう呼ぶようになった。

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