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Ⅱ【ローエングリン】 第11話
致命傷には至らないか。
ショルダーを破損したα新型が距離をとる。
(だが、攻略の糸口は見えた)
致命傷に至らない損傷で、一旦間合いを図るのは、慎重な証拠だ。
勝敗はジェネラルの性能で決まるんじゃない。
(心理戦だ)
相手の心理を逆手にとって攻撃した方が、この戦闘を統べる。
勝てるぞ!
「アキヒト!追い詰めろ」
『はい!』
二振りのサーベルが乱舞する。
白刃で受けたα新型が後退した。
思った通りだ。
慎重に動くα新型は《憾》が同タイプの接近戦用ジェネラルだと知ると、無理な攻撃は仕掛けてこない。
……いいぞ、アキヒト。
目論み通りだ。
「攻撃の手を緩めず、押せ」
敵は勝手に離れる。
それこそ、こちらの手の内だ。
《荒城弐式》が中距離戦闘用ジェネラルである事を忘れたか。
(射程圏内に入ったら《盃ノ陰》で一気に叩く!)
黄金の装甲
あれがビームを跳ね返した。
ならば。
黄金の装甲になる時間を与えなければいい。
(今だ)
《盃ノ陰》装填
「離れろ、アキヒト!」
《憾》がエンジンを噴射する。
ガツゥ
鈍い音が打ち響いた。
「お前ェェーッ」
チィッとアキヒトが舌を打つ。
α新型が破損したサーベルの柄 を分解した。
絡みつく鎖が《憾》の右足を捕らえた。
離脱できない。
(作戦がッ)
水泡に帰す。
《盃ノ陰》が撃てない。
(俺は、統帥の剣だというのに)
統帥のための剣となって、戦わねばならぬというのに。
こんなところでッ。
統帥の足手まといになりたくない!
「なめるなよォォーッ」
かざした右手の平が開いた。
水晶球が露出する。
憾み連なる慟哭を聞け
「《花ト散ル眺メ》」
照射!!
熱波が伸びる。
右手の水晶球から、発射された高熱のビームが鎖を溶解する。
ドロリと溶けた鎖の束縛から、右足を脱した。
ギィィーンッ
別の鎖が、今度は左足を捕らえる。
機体が揺らいだ。
強引に引いた鎖が《憾》を振り回す。
「このバカ力がァァーッ!」
ならば、こちらから。
「飛び込んでやる!」
懐に入った瞬間……
(爆破する)
《花ト散ル眺メ》の熱を撃ち込む。
近距離で熱波を食らえば、いかに頑強なジェネラルであろうとも溶解は免れない。
終えろ
(俺は、統帥の剣)
如何なるものも薙ぎ払う。
「俺の前に立ちはだかるなァァァーッ!!」
『よせッ』
無線が光った。
『挑発に乗るな!アキヒトッ』
……心配いりませんよ、統帥。
(一瞬で終わります)
この一瞬で。
《憾》が、αを爆殺する。
「見ていてください」
統帥
「俺は、あなたの剣になる!!」
「やめろッ、アキヒト!!」
通信を叩いた。
「そいつはビームを跳ね返すんだ!!」
装甲が黄金に輝いた。
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