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Ⅳ【捌里】第7話
「α如きに、俺達の命はやらん!」
パネルが光った。
「エンジン噴射!最大出力!」
翼がうなる。
轟音が密室の暗闇に押し寄せる。
「沈むぞ」
俺と共に、ユキト
海の底まで
命を共にしろ
ザブワワアァァーン
波が天を突き刺した。
黒い波状の渦が、白と藍
二体のジェネラルを飲み込む。
機体が墜ちていく。
海の底
サーベルの楔が、二機を繋いで……
海に墜ちる…………
パチンッ
レーダーの光が点滅した。
ツッ
無線を弾く。
「今だッ!」
この角度
今、この瞬間しかない。
「デュナミスを撃てェッ!」
《ローエングリン》搭載 長距離砲デュナミスを海中で発射すれば、魚雷と同じ砲撃効果が得られる。
俺の背後
レーダーが敵 の赤い光を示す。
ツッ
『今度こそ《捌里》が大破するぞ』
……だろうな。
デュナミスを食らっては、機体はもたない……
(いいだろ、それで……)
《捌里》はよくやってくれた。
最期の役目を与えてやらねば。
(この機体が、俺達の命を繋ぐ)
「爆発する前に、ユキト!お前がッ」
俺を救え
「………信じている」
ビーム反射による機体の熔解・損傷により、緊急脱出装置は壊れている。
けれども。
勝算は、自ら生み出すものだ。
お前を信じている。
お前が俺を信じてくれれば……
(俺は生きられる!)
ユキト!
「撃てェッ!」
『ナツキ!お前の命を預かる!』
お前を守るために
生きる
活路を拓 く!
パネルを叩く。
メーター出力確認
視界「良 」
起動予測 Fine
フェイズ スタンバイ完了
『デュナミス発射!!』
グゴゴゴゴォォオオーッ
海を引き裂く。
轟音がコックピットを揺らす。
レーダーが指し示す方角へ向けて
ドガアァアアァンッ
海水が逆巻いた。
デュナミス命中の爆発が、喝采を上げた。
グガガガガッ
コックピットが激震する。
レーダーの赤い光が点滅する、
この光が正しければ……
戦艦マルク 漕底破損
レーダーは正しい。
俺の計算に狂いはない。
(後は脱出口を確保するのみだ)
ブースに警報音が響く。
赤い緊急ランプが、爆発まで数十秒の警告を鳴らしている。
ユキトが来るまで持ちこたえてくれッ
《捌里》!
ギゴァンッ
不協和音が脳裏を殴打した。
バギィッ
装甲が割れた。
ブースに海水が侵入する。
熔解したボディが、デュナミス射出のダメージで!
水圧に耐えられなくなった………
バギギギギィッ!
浸水する。
コックピットに大量の海水が押し寄せる。
飲み込まれる。
息…がッ!
口に鼻に水が入る。
呼吸ができない。
意識が飲まれる。
海の中に…………
溺ッれ…る………
海水が呼吸を奪う。
肺に浸水する。
意識が消える……
…………………………ユキ…ト………
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