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Ⅳ【捌里】第6話
「俺はッ!」
戦場に残った。
残るからには生き抜く。
この戦場で。
「お前と共に」
生きるために
ユキト
「俺と死んでもらうぞ!」
ガツンッ
鈍い音が響いた。
モニターが壊れている。
視界はゼロ
外は見えない。
頼るのは、現在地を映すレーダーの光のみ
機体同士が密着した。
ガギギィッ!
閃光一閃
抜刀した二本目のサーベルが貫く。
《ローエングリン》の腰と《捌里》の胴を串刺した。
このサーベルは、楔だ。
俺とお前
俺達を繋ぐ、抜ける事のない絆の剣 となる。
「ビーム射出スタンバイ」
ツッ
『ナツキっ、なにをっ』
「跳ね返せ!《ローエングリン》で」
『馬鹿なッ、この距離でビームを反射すれば《捌里》が爆発する』
「俺を信じろ!」
俺達が生きるためには、
「俺達が死ぬ必要があるんだ!」
勝算?
そんなもの、あるわけないだろう。
勝算とは、つくるものだ。
生きる覚悟を持て!
「ビーム発射!」
黄金の装甲をまとえ、《ローエングリン》
『ナツキ!』
光が、飛散した。
黄金の機体が、ビームを乱反射する。
「撃ち落とせェッ!」
《捌里》のビームが拡散する。
《ローエングリン》の装甲で、散り乱れる光が、マルクの砲弾を落としていく。
赤い火の玉が、海水に飲まれる。
全砲弾、除去完了
(何度《ローエングリン》の装甲反射を見たと思っている)
ビーム反射に、どれだけ苦しめられたか。
(だが、そのお蔭で)
データは取れた。
ビーム出力の調整
反射されても《捌里》の装甲が耐え得る、ギリギリのビーム出力だ。
機体は爆発しない。
しかし。
「熔解は免れん」
《捌里》の装甲が溶け始めた。
限界だ。
これ以上の戦闘には耐えられない。
だが時間は稼いだ。
アキヒトの離脱時間も
俺達が生き抜く時間も
ボディが完全に融解する前に!
パネルを指が叩く。
チェックメイトだ、マルク!
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