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Ⅳ【捌里】第9話

助かったんだよ 「ナツキ」 ここは《ローエングリン》コックピットの中だ。 「ナツキ」 もう安全だ。 大丈夫だよ。 だから………… 「目を、開けてくれ……」 死ぬな 生きてくれ 「ナツキッ」 呼吸が…………止まっている。 唇を重ねた。 人工呼吸を施す。 戻ってこい! お前はΩ解放軍統帥だろ、 シルバーリベリオンだろ! 「こんなところで死ぬな!」 αの卑劣な手で お前の最も憎む手段で、お前はここで終わるのか 生きろ! ここからだろッ 生きろ! 生きて……… 俺を見ろ! 「ナツキィィィィー!!」 フッと、微かに唇が動いた。 胸が上下して……二、三度咳き込む。 ………………呼吸した。 「ナツキっ、俺が分かるかっ」 わずかに上げた腕が、俺の手に触れた。 弱々しいけれど、しかし確かに…… 俺の手を握っている。 「……………ユ…キ……ト」 「そうだ、俺だよ」 「ユキ…ト………」 「ユキトだ、もう大丈夫だから」 手を握って、強く抱きしめる。 強く、強く 「ありがとう。生きてくれて、ナツキっ……ありがとう」 「おれ……はっ」 呼吸が途切れて激しく咳き込んだ。 「喋るな。今は体の事だけを考えてくれ」 腕の中でナツキが震えている。 「寒いのか」 呼吸停止で冷たい海にいたんだ。 低体温症に陥っているのかも知れない。 「こんな事しかできないけど」 パイロットスーツの上着を脱いで、そして…… 「ごめんね、ナツキも……」 濡れたナツキのパイロットスーツを…… 「……腕、上げて」 脱がせていく。 体温と体温で触れ合った。 「これで、少しは暖かくなるよ」 心音が重なる。 もう、お前を失いたくない。 あの日のように もう二度と、お前を離したくない。 過ちは繰り返さない。 ナツキを守るよ………… 触れ合う肌の温もりに、俺は安心している。 肌の温もりに、俺は…… 過去の罪に跪く。 あの日は二度と繰り返さない。 ナツキ……… 愛することを許してくれ 「………ナ、ツ…キ」 冷たい指が、触れて…… 掌が俺の頬を包んだ。 鼓動が重なり、触れ合う呼気と吸気 冷たい唇が、思考を奪った。 唇と唇が触れている。 俺は、ナツキにキスされている……

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