67 / 288

Ⅳ【捌里】第10話

俺は、ユキトにキスをした…… あたたかい体温が欲しかったから? ………違うな。 俺は、今この時だけの刹那的なものを求めてるんじゃない。 (じゃあ、俺は何を求めてるんだ?) ………………分からない。 分からないから、キスしてる……… 俺の中で、お前だけが空白なんだ。 お前だけ抜け落ちている お前との時間だけが見つからない ユキトの舌が唇をつつく。 少しだけ………閉じた唇を開けた瞬間 唇が離れていった…… 「ごめんっ」 視線を合わせてくれない。 困惑している黒瞳が苦しくて、俺は謝罪を口にしたけど。 「………どうして謝るの?」 「えっ」 「謝るくらいなら、最初から惑わせるなよ」 ユキト? 「俺も男だから、自制できなくなるッ」 背中が痛いっ。 視界が反転する。 コックピットのシートに押しつけられて、俺はユキトを見上げる。 ……組み敷かれてる。 ユキトの顔が降りてくる。 瞳がぶつかる。 きゅっと睫毛を伏せたけれど、顎を持ち上げられて、強引に口を開かされた。 舌が口内に侵入する。 「ヒアぅッ」 胸の突起を引っ掻かれて、悲鳴を上げた。 獰猛なキスは終わらない。 「俺はッ」 「フワァんぅ」 赤くなった胸の実にしゃぶりつく。 舌が実を転がす。 「酷い男だよ、ナツキの記憶にない俺はナツキに酷い事をしている」 胸の実をかじって、怒張した昂りを太ももに押し当てる。 「………………記憶がないから、ナツキは優しいんだ」 「俺は…………」 薄く開いた瞼がにじんだ。 「記憶がないから、寂しいんだよ」

ともだちにシェアしよう!