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Ⅴ【マルク】第7話

クチュクチュクチュ ジュクジュク、グチュグチュ 独房の静寂に、濡れた水音が響く。 グチュグチュ、クチュクチュ…… 忙しない水音が、すぐ鼻先から聞こえてくる。 「…………ァア」 水音に混じって聞こえた。 端の掠れた艶めいた溜め息 漏れた吐息が熱っぽい。 「お前の…せいだ……」 声が微かに震えている。 「お前が早くッ…決めないから……俺はァ」 クチュクチュ、グチュ 絶え間ない水音 ハァハァハァ 熱を孕んだ呼吸音が重なる。 (もしかして) 俺の思い浮かべた姿は……たぶん現実だ。 雄の臭いがする。 (まさか、ユキト) ………ほんとうにっ グチュグチュ (自分で自分を辱しめているのかっ) ジュクジュク この水音は、ユキトの雄しべが漏らした先走りの液で…… ハァハァハアッ ユキトが右手を上下させて、雄しべを慰めている。 俺が、挿れて欲しい場所を伝えないから……ユキトが自身を、自分の手でよくしてるっ。 「…………イィ」 感極まって微かに漏らした掠れた声に、ビュクンッ、と俺の股間の脈が跳ねた。 ………ユキトがシてる。 俺も自分の、触りたい。 股の熱が膨らんでいる。 快感を貪りたいのに、後ろ手に手錠の掛けられている手では叶わなくて、内腿をもじもじした。 「……恥ずかしい俺を想像してるのか?」 ビクンッ 声だけで、昂りが反応してしまう。 「淫乱。想像だけでイキそうなんだろ?」 そんな事ないっ。 幾らなんでも、俺だって手の刺激が欲しい。触らないとイケないっ。 「……そばに来いよ。一緒に慰めてやるから」 ……どうやって? 疑問に思ったけれども、動いた体を自然と鉄格子に寄せていた。 「脚、開けよ。もっと……もっと開けるだろ。セックスする時の大股開きだ」 俺、分からない。経験ないから。 でもユキトの言う通りに、うんと脚を広げて見せる。 (アハぁッ) 着衣の中で勃起した肉棒を、体温が撫で上げた。 これ……ユキトの足だ。 靴を脱いだ足の裏が、脈打つ熱をこする。 (ヤァんっ、気持ちイイぃ~) 待ち望んでいた快楽に、ブルリッ 背筋が震える。 クチュクチュ、卑猥な水音の聞こえる位置が変わったから。 ユキト……おそらく床に横になって上半身だけ起こして、自慰しながら、伸ばした足で俺自身も慰めてくれているんだ。 ハァハァハアハァ 気持ちイイよぅ~ 腰を振って、腰を回して、いきり立つ熱塊を足の裏にこすりつける。 (アァンぅ……もっとぉ) ドクドク、ビュクビュク、止まらない。 「どっちで興奮してるんだよ。俺のオナニー?それとも、足で悦ぶ変態の自分?」 (恥ずかしいユキトが、俺を虐めるからァ) 反り返った熱棒がドクンドクン、脈打つ。 グチュグチュ鼓膜を犯す水音が、ますます意識を悦楽の底に引きずり込んでいく。 「………おい」 ユキトの声は背後に向けてだった。 「お楽しみの真っ最中なんだ。そろそろ空気読めよ?」 ………………俺達、見られてる? 中を伺う背後の覗き窓が閉じたのを確認して。ユキトが…… 「ごめんっ」 鉄格子から肩を掴んで、抱き寄せられる。 「見張られていた。優しくできなくて、ごめん」 ナツキ……………… 熱を帯びた声が、やっと…… 俺の名前、呼んでくれた。

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