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Ⅴ【マルク】第8話

「ごめん、ナツキ……」 背中に回した両腕が俺を包む。 「Ω政策強行派に、俺は目を付けられている。行動を制限されて、監視されている」 分かってる、ユキト。 お前の立場は。 見張られているのだろうって感づいていたから、お前の振る舞いは当然だ。 冷たい態度で矢面(やおもて)に立って、αから俺を守ってくれていたのだろう。 ありがとう、と。 ……伝えたいのに、伝える術がない。 俺は声を失っている。 「今もカメラで監視されている」 虜囚に人権はない。 (アァウ…んッ) 下腹部の中心で頭をもたげる熱を、右手で握り込まれて、喉がのけ反った。 「監視されているから、我慢してくれ。行為を続けなければ、変に思われる」 (フワぅウ) 息が濡れる。 快楽を求めて、腰が動いてしまう。 膝立ちしたり、座ったり……腰を落としては、また立ったり。昂りを掌に押しつけて、体が勝手に上下運動するぅ~ッ 「俺の手、ベトベトになるまでこすりつけていいから。……聞いてくれ」 腰の動きに合わせて俺の股間で、クルクル弧を描く右手 左腕で包まれて、肩を寄せる。 こんな状態で集中できる訳ないけれど、何とかなけなしの理性をかき集めて、声に耳をそば立てた。 「マルクが伊勢湾を離れた」 (なぜだッ) 《トリスタン》を滋賀県に落とすのではなかったのか。 大阪湾にまわり込む? 投下時間を遅らせてまで、わざわざ遠回りするメリットがない。 大阪府庁はΩ解放軍が押さえている。 敵陣営に乗り込む戦術はあり得ない。 (この艦は《トリスタン》投下のために出港したのではないのか) 伊勢湾を離れて…… (では、マルクはどこへ向かっているんだ?) 「艦は静岡県 沼津港に寄港する」 沼津港だと? 静岡県はα行政区地内だ。 「燃料補給が目的だが……」 伊勢湾を離れ、駿河湾に入る。 これではまるで…… 帰航しているかのようではないか。 日本国 首都 α-大日本防衛軍 本部 東京に 《トリスタン》投下を遂行せずに戻る? Ω解放軍も滋賀県も助かった……と考えていいのか。 否 そんな単純な話ではない。 軍の命令を覆して帰航するなんて。 誰がそんな事をッ! 命じたのは誰だ? 命じられる奴がいるのか? (α-大日本防衛軍に一体、なにが起こったんだ) 「兄が来ている」 ユキトの? 「第4次オオキ改造内閣 副総理 シキ ハルオミ。……俺の兄の名だ」 では、まさかっ。 《トリスタン》投下を中止させたのは、その男の差し金で…… 「間違いないよ。政府専用機で兄上がマルクに入って、マルクの指揮権を兄上が掌握した。 それから、すぐに《トリスタン》投下の中止命令が下ったのだから」 シキ ハルオミがΩを助けた? 馬鹿なッ αが、どうしてΩを助けるんだッ 「ナツキ!」 ギュッとユキトの手が俺を掴む。 「兄とは敵対するな」 耳朶に触れる息が、鼓膜を震わせた。 「あの人は、俺達の考えるよりももっと深いところで戦争している。考察の遥かに及ばぬところで…… あの人との戦いだけは避けるんだ」 (フワっ) 下腹部の膨張を握り込まれて、揺さぶられる。突如、飲み込まれた快楽で、腰がガクガク揺れる。 「絶対にだ。約束しろよ」 ハァハァハァ 半開きの口から唾液が漏れて、せわしない息がついて出る。 言葉の意味も理解できぬまま、何度も首を振って頷いた。 「……いい子だ」 ジッパーを下げられて、着衣を押し上げていた熱を、 プルンっ 取り出されてしまった。 (ヤんっ) 俺の、丸見えだ。 「言う事きいてくれたいい子の『ナツキ』の、皮を剥いてあげるよ」 ……ハっ、ハァウゥハアッ! 指が鈴口を小さく引っ掻いて、繊細な手つきで敏感な先端の皮を、ゆっくり優しく引っ張っり下ろしていく。 (俺の先っぽぉ~) ………空気に触れた。 「亀頭が出てきたよ。大人のおちんちんになれて良かったね。今だけだけど」 ヒィィィ~…ゥっ 裏筋を這った指、先端の竿よりもやや膨らんだ出っ張りをつつくから。 息があられもない悲鳴を上げて。 (ダメぇ、ソコ弱いからぁ) 包皮を剥かれて、刺激になれていない先の穴からピュクピュク、お汁が漏れてしまった。 剛直の下に垂れ下がった袋が重くて、今度先っぽに触られたら、俺……イっちゃう~。 「早すぎだよ。男なら、もう少し頑張らないと」 ………でも。 玉を揉まれて、竿の下から這い上がってきた指が、カリの下で余っている皮を摘まんだ。 「メスならイってもいいよ」 グチュグチュ、グヂュグヂュ 粘液でベチョベチョに脈打つ熱棒を握ったユキトの右手が、上下に(しご)く。 アっアっアァーっ 開きっぱなしの口が、唾液を飲み込めない。 俺ぇっ、イちゃうゥゥっ! なのに、決定的な刺激が来ない。 やわく握られた摩擦では、せぃえき出せないィっ! もっときつく、ぎゅうってこすってぇー。 ユキトぉ…… 「ちっちゃいクセによく出るな。もうイった?」 ちがうっ。 これは先走りで。 もっといっぱい、白いの出る。 意地悪なユキトに首を振るけれど…… 「……なんだ、イキたくないんだ」 (……うそ) 突然、離れてしまったユキトの手 「ナツキの嫌がる事はしないよ」 そうじゃないっ! 中途半端に放り出されて、体の中に溜まった熱をどうすればいいんだ。このままじゃ変になるぅ。 腰を振って、プルンプルン 自分の腹に上を向いた熱脈を打ちつけるけれど、ユキトの右手が帰って来てくれない。 ペチュン、パチィ 静謐(せいひつ)の中に、肉の当たる音だけ響く。 ……ユキト、見てくれていないのか? ペチィっ 「……床にこすりつけたら、イケるんじゃない?やってみたら?」 そんな、なんで……意地悪、言うんだ。 一生懸命、恥ずかしい肉棒プルンプルンさせたのにぃ…… 手でも足でもいいからっ ユキトに触って欲しい。 「酷いのはナツキだよ。俺の手だけベトベトにして、俺の手を拒むなんて」 誤解だ! ……それとも、分かってて言ってるんなら、すごく意地悪だぞ。 「ナツキのミルクで汚れた右手で、俺だけイクよ」 グチュ ……俺の白濁まみれの手が、ユキトの怒張を握って……ユキトをよくしてるんだ。 グチュグチュ 俺の精液なのか ユキトの精液なのか どちらのか分からない粘液が、剛直をこする度に卑猥な水音を奏でる。 グヂュグヂュグヂュグヂュ 水音が鼓膜を犯す。 「ナツキと違って、ナツキのミルクはあったかいよ。俺の雄しべを包んでくれる」 クチュクチュ ユキトの昂りで濡れた音を奏でているのは、俺の先走りの粘液だ…… ふしだらな背徳感に高揚した股間の熱から、ピュクンと蜜がほとばしった。 「触られてもいないのに、反応して汁を垂らすなんて……ナツキはどんな猥褻物を付けてるの?」 (見られてしまった。どうしようっ) 腰を折って隠すけれど。 「また意地悪して。見えないと、俺がイケないだろ」 ユキトは俺の恥ずかしいモノで興奮してる。 「ちゃんと見せて。……そう。そうやって勃ち上がったモノを俺に見せつけて。 ……聞こえるだろ。粘液の音。音に合わせて腰振って」 鼓膜に打ちつける音だけを頼りに、腰を動かす。 ……これでいいのか? …………………………なんだろう。 体の芯が火照る。 後ろの孔…………疼いて、熱い。 なんで? 「想像してるんだろう、ナツキ」 見えなくても俺は…… 「ナツキを犯してるんだよ」 大事な後ろの蕾に淫猥な水音をグヂュグヂュ穿(うが)って、ナツキを虐めてるんだよ……

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