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Ⅴ【マルク】第16話

肩を押さえられて、跪かせられる。 下腹部に腕を回されて、腰を持ち上げられた。 (やめっ) 下半身を覆う布がなにもない今、腰から下が丸裸だ。 こんな姿勢では……尻の孔が見えてしまう。 羞恥で体が熱くなる。 「火照ってるじゃないか。淫猥動物は良からぬ事を妄想して、ココを膨らますんだろう?」 緩く起立した脚の間の膨張を握られて、身をよじったけれど、ユキトが離してくれない。 (あらぬ場所を、お前に見られているからっ) 勃ってしまったんだ。 変な想像なんかしてない! 「兄上に掘られたいのか?それとも、俺と兄上、二人に輪姦(まわ)されたい?」 (なに言って!) 抗議さえ許さない。口をついた息が甘美な悲鳴を上げる。 丸見えの……臀部の割れ目を指が一本、這ったからッ ゾクリ 快感スレスレの悪寒が、尾てい骨から背骨に駆け上がった。 「……図星か。後ろの口がヒクヒク頷いているぞ」 (アハゥウ~っ) ビクンッ 背筋が跳ねた。 全身が粟立つ。 (ユキトの指がァっ) 入ってる! お尻に、 第一関節くらいまでッ (……ファ) 指はすぐ抜かれて、空虚になった孔からトロンと粘液が垂れてきた。 指に付着していた、ユキトの…… 子種だ……… 「興醒めだな」 腰を支えていた腕も離れていき、独房の床に体躯が崩れた。 「太けりゃ何でも悦ぶんだろ、お前の雄孔(オスアナ)って」 尻の割れ目に、つぅ……っと白濁の粘液が伝っている。 白濁で汚れた孔を、ユキトの目が視姦している。 ヒクヒクッ 雄を知らない無垢な孔が蠢いた。 ビクビクッ 前の昂りが脈打つ。 「変態。種汁垂らして、床で身悶えてろよ」 フッと笑った口角が吊り上がる。 (イヤだっ) ユキト! こんな姿の俺を放ってくなッ 反り返る熱脈が見えないように、体をよじった拍子に、後ろの蕾からますます粘着質の汁がこぼれ出てしまった。 白い体液が股まで伝っている。 「腰振って気持ちよさそうだな?俺の種は、そんなにイイか。 ……淫猥動物でも気に入ってくれて、嬉しいよ」 ふうぅ~ 白濁の蜜を漏らす孔に、息を吹きかけられて…… (ァン~) ………腰を、振ってしまった。 (……ヤっ) 虐めないで。 体が……どうかなってしまうっ。 (怖い) 後ろの孔が、変なんだ。 ヒクヒク、ヒクヒク 痙攣したみたいに、入り口のヒクつきが止まらない。 粘液で濡れた場所……息を吹きかけられただけ…なのに。 どうやったら止まるんだ。 ハァハァハァ 教えて、ユキト ハァハアハァ 俺を、元の体に戻して! 「そのくらいにしてあげないか。可哀想に、怯えてしまっているぞ」 「俺の視線だけで、勃起するΩですよ。(むし)ろ怖がらせているのは、兄上の方なのでは?」 「私が原因か……困ったな。融和派がΩを怖がらせたのでは、今後の政策にも支障が生じてしまうね」 優しくしているのに、どうして優しさが通じないんだろうねぇ?……と。語る声色に反省は微塵もない。 「やれやれ、退散するとしよう。次はそのΩに気に入ってもらえるように、なにかプレゼントを用意するよ」 「副総理ともあろう人が、Ωに賄賂ですか」 「滅多な事を言わないでくれ。紳士としての(たしな)みだ」 そうだね……プレゼントは…… 「優秀な雄α……なんてのは、どうだろう?」 (冗談じゃない!) どこが紳士だッ! 「兄上!悪ふざけも大概にしてください!」 「……冗談……じゃないよ」 (………………えッ) 「兄上ッ」 「目くじらを立てないでくれ。私はね、事実を言ったまでだ」 (俺は…………) αに ユキト以外のαにあてがわれてしまうのか。 交尾用Ωとして…… (嫌だ!) 「こいつは、俺の物になる予定です!」 (ユキト……) 俺を助けてくれる。 「ならば、お前がこのΩの『(ツガイ)』となる優秀なαになればいい」 唇が、弧を描く。 「ムキになるところを見ると、お前もまだまだ子供だね」 「……俺をからかったのですか」 「そうだよ、ユキト」 お前の中の…… 「心理の深層を図るために、私はお前をからかった。 覚えておくといい。政治家にとって、言葉は剣であり盾だ。ありとあらゆる局面で、敵から身を守り、敵の牙城を崩す形無き懐刀(ふところがたな)となる」 「あなたにとって、俺は敵ですか」 「敵を騙すには先ず、味方から……だよ」 ハルオミッ!! まさか、お前は。 俺の正体が……… (気づかれてしまったのか?) 「兄上ッ」 「ユキト」 芯の通った低音が、ユキトの声の先を制した。 「マルクはΩ政策強行派の艦だ。政敵の動きは警戒し過ぎるくらいが、ちょうどいい」 「………御意」 声の端が震えている。 辛うじて、ユキトが平静を保っている。 「(ガラ)にもない政治論を説いてしまったね。……さて、私はそろそろ戻るとしよう」 ぎゅっと、ユキトが拳を握りしめる。 兄に隠して爪を立てた拳が震えている。 「後で相手してやるから。大人しく待っていろ」 鉄格子を隔てて、立ち上がる気配がした。 「身支度を整えて、お部屋に参ります」 「では、後程な」 二つの声が遠ざかる。 独房の扉が閉じた。

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