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Ⅵ【ファウスト】第14話
ユキトが来る……
マルクの指揮官として公務に就くため、ハルオミさんの出て行ったドアを見つめる。
この部屋にユキトが来てしまう。
なにを話せばいい?
俺はユキトとあれだけの事をしておきながら、ハルオミさんと結婚してしまったんだぞっ。
事情があるとはいえ。
そうだ、まずは経緯を話さねば。
ユキトだって、兄が撃たれる事は望まない筈だ。
それから、どうすればいい?
説明したら、次はなにを話そう。
ユキトに……「おめでとう」って言われたら…どうしよう……
来るのが遅いが、まさかお祝いの品を選んでるんじゃないよな?
……それはない。
ここは戦艦マルク
海上だ。
洒落た店はない。
けれど!
身近にある物から持ってきたらどうしよう。
ユキトは……
大量に……勝負下着を持っている。
ユキトが黒はいて、俺はユキトに勧められるがままは嫌だったから、パープルをはいている。
あと白、ピンク、青、緑、オレンジが残っている。
勝負パンツを贈られたら俺、ショックだ。
……夫婦の営みを奨励されているようで~
ユキトはド天然だ。
絶対ないとは言えない。
いや!そんな事よりも!
どうすればいい。
いっそ、α-ジェネラルを奪取して逃亡するか。
無理だ。
海中では、ジェネラルを発進できない。
そんな事よりも、ユキトの誤解を解く方法を考えねば!
………………
………………
………………
クッ、ありとあらゆる策でα共を翻弄してきたシルバーリベリオンたる、この俺がッ
俺の頭脳をもってしても、まるで思いつかない……
誤解を生む状況をつくってしまった我が身を悔いるばかりだ。
………ハルオミさんの誤解も、解けていない。
俺は………………
………………きょッ、きょこん好きではない。
………嫌いではない…というだけだ!
誠意を見せよう。
部屋で待つのではなく、ユキトを迎えに行こう。
話はそこからだ。
ユキトなら分かってくれる。
小さな電子音がして、ドアが開く。本当に施錠されていない。
早くユキトに会いに行こう。
勇んで踏み出した部屋の前にいたのは……
「ユ…キッ……」
気持ちの整理がつかないまま、出会ってしまった。
待っていた……お前に。
「ナツキ」
「俺は、巨根好きではない!」
「………………えっ」
……ユキ、ト………
違うんだッ
誤解だッ
こんな事を伝えたかったんじゃないっ。
俺ッ、気が動転して……
お願いだから忘れてくれーッ!!
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