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Ⅶ【今世神君】第7話
眼下には、海があるだけだ。
波が流れる。
鉄の残塊を運んで、波が揺れている。
「お前が全部、壊したんだろォォオーッ!!」
同志諸とも
テロリストのジェネラルを薙ぎ払い、焼き捨てて、マルクのαを
俺達の仲間を奪った、お前こそがッ!
「凶星だ!!」
お前だけはッ
「墜とす」
『堕ちるのは、うぬだ』
桜が綻 ぶかのように……
頬に指を当て、薄く開いた唇が笑んだ。
『神に愛されなかったうぬらを壊そう』
『……味方も敵も物のように。君は、壊れているよ』
サファイアの冷冽 な視線が、鋭利に光る。
『君は誰の赦しを得て、我が国で生きているんだい?』
『「我が国」ではなく。我、神君の神の国である』
『君はただの大量殺戮犯だ』
『神に贄 は付き物なのだよ』
指先が天を突き刺した。
『第二の洗礼の幕開けだ』
ミサイルの残骸が、水中から浮き上がる。
これは武器なのか?
何百もの破片が波間から浮上して、海上を埋め尽くした。
(熱量が上がっている!)
ミサイルの爆発が、第一の洗礼
爆発によって内部から散弾した破片が、第二の洗礼
(これは兵器だ)
「逃げろッ!」
爆発から生き残った《タンホイザー》達が全滅する。
熱量上昇
散弾が褐色の光を帯びる。
ビームだ。
『流星よ、人の子に永久 の眠りを』
散弾同士の光が反射して、赤褐色の幾何学紋様を海面に描いた。
……指に隠したほくろを押し上げて、下唇が囁いた。
『照射』
ビームが白波を貫く。
『出撃だよ!』
戦艦マルク 射出ブリッジ
タービンがうなった。
アウターマーカーの光が、奥から手前に延びる。
イグニッションが射出ブリッジ 滑走路を照らす。
「ユキト!」
運命の名前を叫んだ。
ブオォォォォーッ
高速回転するタービン
空気が鳴動する。
イグニッションが青く照り輝いた。
I have control .
『シキ ユキト、《ローエングリン》出る!』
金色 の光が、海原 に燃える。
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