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Ⅹ【シキ ハルオミ】第1話
「俺が全機落とす。それで終わるんだ。戦争が終わるんだ。全部落とすんだッ!!」
『………戦争はもう終わっているんだよ』
「なら、どうしてっ」
『最後の一機まで自爆をやめない。それがテロなんだ。
私達は焼津港を奪還し、日本にテロの拠点をつくらせない事に成功した。
未来を取り返したんだ。
胸を張るんだよ』
「……でもっ」
『マルクは間もなく沈む』
「だから俺がマルクを守って!」
『艦の破損状況がひどい。沈没は避けられない。《タンホイザー》にはマルクからの戦線離脱を命じた。
現在、艦内乗員の避難を開始している』
「ハルオミさんもっ!」
『私はマルク最高責任者だ。
全隊員の避難が完了するまで、ここを動かないよ』
「じゃあ、俺が迎えに行く!
全員の避難が完了したら、ハルオミさんを《ファウスト》でッ」
『火の手がまわっている。デッキは火の海だ。《ファウスト》磁力フィールドは万能ではない。火に巻かれたら、君の身が危ない。
君を危険な目には遭わせられない』
「俺達は夫婦だろ!」
『夫婦だからだよッ!!』
「ハルオミさん……俺を信じてくれッ」
『信じているから、君を《ファウスト》に乗せた。
夫である私が、妻の君を守るんだよ』
「違う!妻だから、夫のあなたを守りたい!」
『戦って、生きてくれ』
「ハルオミさん。あなたは……」
『君は戦える。世界の不条理と。シュヴァルツ カイザーと対等に戦った君だから。
妻である君を信じている』
「ハルオミさん、嫌だ!俺はッ」
『妻である君を、愛しているよ』
「俺も、あなたを。
ハルオミさんを………愛しています」
『ナツキ………』
ありがとう…………
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