274 / 288

Ⅸ【青海の彼方に】

「全部俺が駆逐する」 テロリストジェネラルを全部ッ 「俺が落として終わらせるんだァッ!」 操縦桿を握った……刹那 ツッ 通信ランプが光った。 『ナツキ、聞こえるかい』 「ハルオミさんっ」 モニターの向こうに、聞き慣れた声が響いた。 「待っててくれ。俺が全機撃ち落として、この戦いを終わらせる」 『そうだね。君の力を借りなければならないね。私に協力してくれるかい』 「もちろんだ!」 『ありがとう……』 サファイアの瞳が、柔らかな光を帯びた。 『《ファウスト》システム変更。 アフターバーナー稼働、高速エルロン展開』 操作パネルの上をハルオミさんの指が滑る。 『ナツキ、そのパネルを押すんだよ』 「分かった」 中央で淡く光るパネルを押した。 グォン、グォン、グォォーン コクピットが鳴動する。 ブースのアナンシエターライトが真っ白にはぜた。 (なにが……起きた?) 操縦桿を握る。 作動しない。 「どうしたっ、動けっ!」 《ファウスト》が俺を拒絶する。 エンジン圧が上昇してる。 大鷲が翼を閉じた。 飛行モードのシステム変更が起こっている。 「なにをしてるんだッ、《ファウスト》!」 パネル操作を受け付けない。 押しても押しても、全く違うパネルが光る。光っていく。 止められない。 操縦桿が動かない。 《ファウスト》が俺の意志ではなく…… あなたの意志を持っている。 「ハルオミさんっ!!」 『さようなら………ナツキ』 モニターの唇が別れを……………告げた。 エンジンが噴き上がる。 『ナツキを安全な場所へ』 《ファウスト》……… 『飛べ』 光が鳴動する。 操縦桿が反応しない。 握る手が白く固まって、震えている。 「………飛びたくない」 飛びたくないんだ。 あなたから離れたくない。 どうしてッ どうしてなんだッ ハルオミさんッ!!

ともだちにシェアしよう!