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第24話 存在(1)

 愛しているからこそ、苦しみから解き放ってあげたい。そう伝えたかったのかもしれない。  けれどすべてを愛しているがゆえに、醜く歪んだ恋人を愛せないと、突き放したようにも見える。  ある種のハッピーエンドではあるが、なんだか少し胸に引っかかる終わり方だ。なぜあそこで、愛していると言ったのだろう。  受け止めたかったのは、恋人の心ではなく、恋人を想う自分の心。愛しているのは恋人を想う自分。  救いたかったのは、自分自身だったんじゃないだろうか、なんて考えまで浮かぶ。 「よくわからない終わりだな」  しばらくエンドロールを眺めて考えてみるけれど、やはりすっきりしなくて、なにを最後に伝えたかったのかがわからない。  なぜあの台詞を選んだのだろう。 「悲しい、二人のお話だよ」 「え? 一応ハッピーエンドだぞ」  小さく呟かれた声を振り返ると、リュウの頬を一筋涙が伝った。あまりにも静かに泣くものだから、その涙に驚いてしまう。  そっと手を伸ばして、濡れた頬を拭ってやれば、後ろから強く抱きしめられた。 「どの辺りが、悲しかった?」  首筋にすり寄るぬくもりに、くすぐったさを感じながらも、はらはらとこぼれる涙をじっと見つめてしまった。  彼の目に、心に、あの世界はどんな風に映ったのだろう。 「愛している人、受け止めたい。でもその想い、相手も自分も苦しめて、愛してる気持ちすべて壊してしまう。一緒にいること、その人のためにはならなくて、それ終わらせないとって思ってる。断ち切らなきゃいけない。終わらせなきゃいけない運命なんだ。二人のために、二人が愛してる時間、それを捨てなくちゃいけない」  彼の目には二人の愛が見えたのか。自分の目には映らない愛情が、彼の目には映っているんだ。  二人の関係を断ち切ることで、お互いがすべてから解放される。これで恋人の魂を、自由にすることができるのだと。

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