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第65話 身体の熱(3)

 つま先まですべて脱ぎ去ったら、満足げに目を細められて少し恥ずかしくなる。肌をさらすのは初めてではないのに、その身を両手で抱いて、恥じらうそぶりをしてしまう。  生娘のように、うぶな反応を示すそんな自分に、なんだかとてもむず痒くなる。  だがそれがお気に召したのか、リュウは目を輝かせながらゆるりと口の端を持ち上げた。  雄の色香を放つ彼に見下ろされると、見つめられた先から熱が広がり、身体を侵食されていくような気分になる。  それと共に、なんだか心が満たされていくような気になった。  瞳の中に自分が映っているそれだけで、いまは彼の心にいるのは自分だけなのだと、優越感にも浸れる。  いまだけの夢だとしても構わないのだ。この瞬間をこの胸に思い出として、残しておければいい。 「宏武、愛してる」  耳元に囁かれる、愛の言葉に胸を切なくさせながらも、腕を伸ばして愛おしい人を抱き寄せる。引き寄せるままに近づいてくるリュウは、優しく唇にキスを落としてくれた。  唇に触れるぬくもりが嬉しくて、回した腕に力を込める。  触れるだけだった口づけは、少しずつ深まっていき、お互いの熱い吐息が口先に触れた。  舌を伸ばして絡め合うと、こすれ合う場所からじわじわと、気持ちよさが込み上がる。 「リュウ、激しく抱いて」 「駄目、今日は優しくしてあげる。目一杯、愛してあげるよ」  なにも考えられないくらい、めちゃくちゃにして欲しいのに、優しくするなんて残酷ではないか。そんな風に抱かれたら、忘れられなくなる。  離れた時に一人でいるのが辛くなってしまう。  それなのにリュウは、壊れ物を扱うみたいに、優しく身体の隅々にまでキスをしていく。  足の指まで丹念にキスをしていくと、今度は肌を舌で撫で始める。肌をくすぐる舌先に、翻弄されるように身体が跳ね上がり、震えてしまった。  敏感な場所を撫でられると、口先からは甘えた声が漏れて、もっと刺激が欲しいと、ねだるように腕は彼をかき抱く。 「リュウ、リュウ、いやだ、もっと」 「駄目、もっと可愛い宏武を見せて」  腰に回された腕で身体を抱き上げられると、ベッドの端から中央へと移動させられる。広いベッドの真ん中で、じれったいほどの愛撫を繰り返されて、声が縋るように涙声になっていく。

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