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第71話 哀哭(1)

 重たいまぶたを持ち上げてみると、自分は清潔な乾いたシーツの上に横たわっていた。触り心地のいいシーツに、誘われるように寝返りを打つが、身体がひどく重くてだるい。  尻の孔にはいまだに、なにかが入っているかのような違和感があった。  途切れ途切れの記憶を巻き戻すと、あれから風呂場へ行った記憶が微かにある。そこでもリュウは発情した獣のように、自分の中に押し入ってきた。  最後のほうは彼の熱と、律動だけで何度もイかされて、頭がおかしくなりそうなほどだった。  腹の中に何度も吐き出されて、このまま孕んでしまうんじゃないかなんて、錯覚まで起こしてしまうほどだ。  そのあとはもう本当に記憶がない。意識を飛ばした自分を介抱して、リュウはわざわざベッドを整えてくれたのか。  身体を持ち上げてみるが、ベッドの上にも部屋の中にもリュウの姿はない。サイドテーブルの時計を見ると、十一時を過ぎたところだった。  ずいぶんと長く眠っていたんだと気づく。  もう彼は行ってしまったのだろうか。確か昨日リュウは昼までだと言っていた。けれどもしかしたら、リビングにまだいるのかもしれない。  そう思い、身体を起こしてベッドから下りようと試みた。腰がかなり重たいが、なんとか立ち上がれそうだ。 「……すごい噛み痕」  タオルケットが肌から滑り落ちると、その下に隠されていた身体があらわになる。鎖骨、腕や太腿、皮膚の柔らかな部分にくっきりと赤い痕が残されていた。  鈍い痛みを感じて、首筋を指先でなぞると、ピリリとした痛みを感じる。  鏡で確認しないとわからないが、ここにも噛み痕は残されているようだ。これはしばらく残りそうだなと、思わず苦笑いをしてしまう。  リュウのこれはマーキングみたいなものだろう。興奮するときつく噛みついてくるのだ。  だがそれだけ執着されているのだと思えば、痛々しい痕も愛おしさに変わる。 「リュウ?」  シャツを羽織り、デニムを穿いて簡単に身支度を調えると、寝室の戸を引いた。すると腹の虫を誘うような匂いが、部屋に満ちているのに気づく。  視線を動かしてキッチンを見れば、彼が鍋を前にしてなにかをせっせと作っていた。

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