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「さて、どうしたものか」  調理場の片付けを終えた逸也は、座敷への扉前で腕を組んだ。すやすや眠る困惑の種を見下ろしてため息をつく。 「なあ、もしかしてそいつ、家出少年じゃねぇか?」  売れ残りのメンチカツをかじりながら巧が運んできたのは、幼児がすっぽりと収まってしまうほどの特大バックパックで、明らかに普段使いの大きさではない。 「ほら見てみ。子供みたいな顔してるしさ」  その辺の若者と同じくらいの体格に見えたが、抱えあげてみるとその重さは標準よりずっと軽いのではないかと感じた逸也だった。 「んー、確かになぁ……」  小作りな輪郭に収まったパーツひとつひとつはそれぞれの見本のようにきれいな形をしているが、どこか未完成のように見えるのはまだ成長途中のせいだろうか。青ざめてはいても毛穴など無いような肌はつるりとしている。  不精ひげの生えた自分の顎に手をやって、逸也は再び重たく息をはいた。

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