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 日向がトキタ惣菜店に居着いて五日が過ぎた。  目が覚めるとブレックファーストの準備が出来ていて、逸也はあくびをしながら席につく。白米と納豆の純和風でも揚げパンが乗ったお粥でもぐつぐつ煮立った赤い鍋でもベッタベタのソースが絡んだ肉の塊でも、出されればペロリと食べられる胃袋を持っているし、別に店の商品ばかり食べてる食生活でもないのだけれど、なぜか毎朝トーストに玉子料理とあったかかったり冷たかったりするサラダが出てくるのだ。  多分それは最初の朝食を逸也が盛大に誉めたせいで、実際本当に久しぶりに誰かに作ってもらった朝ごはんというものが素晴らしく美味しいと思ったからで。  誉められたことに一生懸命になる日向をかわいいやつだと思う。そして今朝もいい匂いがしていた。  まず最初に出されるコーヒーへ「あちっ」とか言いながら口をつけるまで、日向はその場に立っている。まっすぐ生えたまつげに縁取られた瞳が、不安そうな色をしているのも毎朝のこと。 「うん、うまい」  逸也のひとことでようやく席についても、瞳はまだ薄曇りな感じだ。

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