33 / 191
4―2
カリカリに焼かれたベーコンで半熟の黄身をすくって口に入れながら今日の作業段取りを話し始める頃、日向の顔にやっと陽がのぼってきた。
「今日はちょっこり買い出ししに行こうと思ってんだ。洗剤とか雑貨類とかな」
「それ、俺が行ってもいいですか?」
「いいけどさ、けっこうな荷物になるぜ。大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。俺、商店街のほかの店って全然知らないから興味あるし」
「商店街の外にも行ってほしいんだけど。そしたら買い物リスト作るわ」
トーストをくわえたまま、チラシで作った裏紙メモに買い出すものを書き付けていく。我ながらじじむさいなぁと一瞬ボールペンの先が、『本日特売!』の文字の裏で止まった。
結婚していた頃の、妻がこだわり抜いて揃えたインテリアの中にはチラシなんて存在しなかった。調べものをしながら、なにか書くもの書くもの、と引き出しを開ければ、書き心地なめらかなどこそこのペンやシンプルなデザインだが上質なメモパッドが整然と並んでいて。
端末に入力してしまえば必要なくなるメモを手にして、妙に居心地の悪さを感じたことを思い出す。
ともだちにシェアしよう!