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 右上がりの文字が連なったチラシを、日向はじっと見つめてから丁寧に折り畳んでポケットにしまった。まるで大切なもののように上から一度軽く押さえる様子に、逸也の口許が緩む。 「今日はさ、駅向こうのドラッグストアがポイント三倍デーなの。みみっちいかもだけど、雑貨はそっちで買ってきてもらえると助かる」  チラシのメモにポイント三倍デー。チマチマした庶民魂を自虐的に披露すれば、日向はその言葉にキョトンとした顔を返してくる。 「どうしてみみっちいんですか? ポイント三倍なら三分の一の買い物で貯まってくってことですよね? すごくないですか?」 「お、おう」  価値観の一致。小さなことだけど大切なことだから嬉しい。逸也は再びにんまりとしてしまった。 「なにニヤニヤしてるんですか」 「うん。日向はかわいいなぁって」 「は?」 「かわいいかわいい」  よしよしするように頭を撫でまわして抱えこんだら耳まで赤くしてジタバタするから、逸也の悪ふざけは止まらない。

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