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「今日もがんばろうなー、日向」 「言われなくても頑張りますよ。だから離せっ」  ポットみたいに湯気を出す日向が更にかわいくて、きれいにカーブを描いた後頭部をぐりぐりかき回すのが楽しくて仕方ない。勢いついでに背中を撫でまわしてから形のいい尻を鷲掴みした。  骨だけだった体に、うっすら肉がついてきたのはトキタの惣菜のおかげだと思うと「ふへへへへ」なんて変な笑い声が出てしまう。なんだよこれ、ヘンゼルとグレーテルの魔法使いかよ。太らせてどうしようっていうんだ。 「イチさんっ、セクハラだからそれっ」 「ちげーよ、健康診断だ」 「意味わかんないですっ。あ、やだ、尻を揉むな変態っ」  さんざんいじくり回された日向がプンスカしながら階下へ降りていく足音を聞きながら、逸也は食後の一服とタバコに火をつけた。吐き出す煙が三日月型になるほど口許の緩みがなおらない。

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