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モヤモヤしながらハヤシライスを作り終え、風呂の支度をし、空腹も忘れて日向はソファにぼんやりと座り込んでいた。
逸也が好きで高揚する気持ちと、それに伴い生まれる嫉妬心や自己嫌悪や過去の記憶に、日向の心はいささか疲れぎみだった。
「はぁー、どんなに想ったってイチさんはヘテロなんだし……。嫉妬したって意味がないってわかってるけど」
そうだ。逸也にはどうやったって永遠の片想いなわけで、だったら仕事の片腕としてそばにいるという気持ちに切り替えなければ。
通りを走ってくる車の音が、トキタ総菜店の前で止まった。逸也が帰ってきたとカーテンをそっと開けてみればビンゴで、ほっとしたのもつかの間、続いて降りてきたアヤカの姿に先ほどの決意も簡単に揺らいでしまう。
女性にしては長身だが、すらりとしたモデル体型は、同じく雑誌の表紙にでもなれそうな逸也ととても釣り合って見える。夜目にも艶やかな巻き髪がふわりと揺れる様は、鱗粉をまいて羽ばたく蝶のようだ。
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