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**** 「……あ、ぃや、ああっ」  思わず漏れてしまった自分のあられもない声に、日向は慌てて手の甲を噛んだ。すると、熱い息に包まれていた耳元で「なんだよ」と拗ねた声がする。と同時に手首を捕まれ万歳させられた。 「ちょ……、やだ、イチさん。……っああ」  両手をシーツに縫い付けられたまま、弱い耳元をねぶられたら我慢なんて出来るわけがない。必死で唇を噛んだって、甘えたような細い声をパッキンの緩くなった蛇口みたいにつぎつぎこぼしてしまう自分が嫌だ。 「声ぐらい聴かせろよ」  まだお昼前の明るい部屋でベッドに引き込まれて、日向は暗くしてほしいとねだった。逸也は「お前の乱れるところが見たい」としぶったけれど、ぎゅうぎゅう抱き締めてくる腕を押し返して遮光カーテンをぴっちりと閉めた。  薄闇の中で逸也が、燃えるような目で見おろしてくるのを感じて全身がざわめく。  大好きなひとに心も体もすべて預けたい欲求と、大好きなひとが男の自分を肌で知って幻滅する恐怖と。
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