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 なんとなく素っ気ない。帰ろうと思ったところだったが、その言葉の温度に今度は頭がカッと熱される。 「言われなくても帰りますよっ」  百パー怒った口調で言ってみても逸也の気はそぞろという感じで。自分よりも商店街のことのほうが大事なのかと子供じみた嫉妬がわいてきてしまう。「お勘定はイチさんからもらってください」と当てつけて店を出ても、釈然としない気持ちは消えなかった。  相変わらず夜の商店街はゴーストタウンのように静まり返っている。雨混じりの北風に首筋を撫でられて、熱くなっていた心と体がシュンと冷やされると、まるで逸也と自分の温度差みたいで切なくなる。  悔しいなぁと思いながら、そんな気持ちは贅沢なこともわかってる。小さなことに拗ねていないで、早く帰って明日の朝食の味噌汁用に出汁でもひこう。絶対飲みすぎて帰ってくるはずだから。  パーカーのフードをスポンとかぶり、足元のスピードを速めた時だった。 「よお、日向」  考え事をしていて気づかなかった。音もなく停まった白い営業車から、 作り物めいた爽やかな笑顔が覗いていた。

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