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 意思の強さの表れみたいに斜めに上がった凛々しい眉と、あたたかさと優しさをたたえた下がり気味の目元。正義感に溢れ、みんなに慕われるこのひとの未来を、自分のような人間が汚してはいけない。だから。だから。 「エロさを垂れ流してないで早く夜回り行ってください。親父さんたちに怒られますよ」  ボタンがとめかけで、はだけたシャツの胸を押しながら言い返した。最後まで憎まれ口しか叩けなかった。可愛げがないやつだったと思われるのだろうか。でも、それでもいい。思い出してもらえるなら。 「お前はちょいちょい言葉づかいを間違ってんぞ。大人の色気って言え、大人の色気って。そんじゃ行ってくるな」 「いってらっしゃい」  きれいに引き締まった広い背中を細身のモッズコートで包み、逸也が玄関の向こうに消えていった。 「…………さよなら」  唇からこぼれた別れの言葉に、心もからだもちぎられて、バラバラになっていく。痛い。苦しい。つらい。好き。だいすき。  無理やり蓋をしていた涙腺が決壊して、どこにこんな貯水していたのかと思うくらい溢れてくる。涙と一緒に大切な思い出まで流れ出さないように、逸也が置いていった大人の色気をかき集めて抱き締めた。  ――――イチさん。

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