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おまけ―5
あかねも興奮しながら上腕二頭筋をぶんぶん振って逸也を応援している。その隣で日向は胸に手をあててほぅとため息をついた。
「イチさん、かっこよすぎる……」
ステージ上に三人が並べば、比べることが意味なく思えるほど逸也の際立った容姿は圧倒的な存在感で、ひいき目を無視しても逸也の優勝は間違いなく思える。つぶっていたまぶたを開けると、自分の細い足首が見えた。
二丁目時代は着物で店に立つこともあったあかねが見立ててくれた浴衣。生成りの生地が日向の清楚な雰囲気にピッタリだと逸也も喜んでくれたけれど、ヒョロリと貧相な体型が急に恥ずかしく思えてきた。あんな男前が自分を好きだと言ってくれたことが奇跡のようで、もしかしたら夢をみているのではないかと少し不安になってしまう。
そんな日向の心中を読んだのか、あかねに背中をバシリと叩かれた。
「イッちゃん、絶対優勝するわよ。あけぼの市一番のイケメン彼氏がいるんだから、ヒナちゃんはもっと胸張らなきゃダメよぉ」
あかねの馬鹿力に背中がジンジンする。夢じゃないんだな、と日向はあかねに笑顔を見せた。
ステージではそれぞれがこのコンテストへの最後の意気込みを語っている。ほかの二人は自分のアピールポイントを話しているのに、逸也だけはトキタの惣菜を宣伝しているのがおかしかった。
「イッちゃーんっ!」
あかねの野太い声援に逸也の顔がこちらを向いた。日向と目があったとたん、鼻の横をチョイチョイっと掻いたのは照れているから。かわいい。歓声があがる。日向だけでなく、会場全体が逸也への期待に膨らんでいるのがなんだか嬉しかった。
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