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第21話 僕は2度目 君は初めて

「ごめんね、こんなにたくさん話して、なんか余計なことまで喋っちゃった。 それに嘘もついてた。 あのとき、本当は話してすらなかったよ。 お父さん達が僕が養子であることに気づいてるのかはわからないけど、僕が頑張ったところでなにも変わらないって思えてきてさ。 どう?何か思い出せた?」 ついついいっぱい口から出てしまった過去の話。 「ごめん。思い出せない。でもやっぱり、他人じゃないんだな。」 「そうだよ。僕たちは恋人なんだよ。 他人じゃない。でも友達でもないんだ。」 こうやって話してわかった。 僕は白羽を傷つけたくないわけじゃなかった。 「僕、話してわかったけど、白羽を傷つけたくないから喋らなかったわけじゃない。 僕が傷つきたくないから言わなかったんだ。 僕たちは恋人だよっていってしまったら、もう本当に元には戻れない。 後には引き返せない。 僕はこの現状に甘えてただけみたいだ。 本当にごめん。 だから嫌なら嫌っていって。 僕は白羽のおばさんにも会わない約束をした。 だから…」 「俺はまだ何も言ってない。」 「…へ?…」 「だから、何も言ってないだろうが! 嫌とか友達になれないとか、 そりゃ驚いたよ。まさかこんな馬鹿げた設定が現実に起こるとは思わねえからさ。 でも、納得したよ。 やっとスッキリした。 俺はお前のことを知らないはずなのに、目を覚ました時にいたのはお前。 あのとき母さんや他のやつらが急に病室に入ってきたとき誰かわからねぇからはじめはみんな追い返したんだ。 でもお前だけにはしなかった。 なぜか出来なかった。 俺はこいつを知らないはずなのに 毎日病室に来て鬱陶しいはずなのに 追い返せなかった。 むしろずっと考えてしまった。 結局のところさ、頭の記憶は空っぽでも心は覚えてたんだよ。だからきっと俺の心の奥底で訴えてたんだと思う。『そいつだけは手放すな』って」 白羽の目に僕の顔はどう写っているだろうか。 きっと涙でぐしゃぐしゃだろうな。 「嬉しい。それだけで僕は嬉しいよ。」 「だからさ、また来てくれよ。俺は待ってる。」 言わなきゃ。 ここで言わないとお互い後悔するから。 「ごめん。それでも会いに行けない。 事故の原因が僕だって分かってしまったいじょう、もう会わない。 これは僕が決めたこと。例え思い出さなくても知られたらやめようって。」 「なんでだよ‼母さんか? 母さんにはもう説得した!もうお前が来てもなんも言わねぇよ!」 違う。そうじゃない 例え今の僕たちが恋人の関係になれても なれなくても、その関係であった事を今の世間は認めない。 子供の時はただの茶番に思えても、 20に近づく僕たちがそんな事を心の奥に閉まっておくだけでも偏見を買われる。 もう、すべてが無かったことにするしかないんだ。 「ごめんね白羽。そうじゃないんだ。 僕が勝手に決めただけ。 僕がもうしんどいんだ。耐えられない。 こんなワガママで本当にごめん。 でも1つだけ許して。」 そういって僕は白羽の横に座ってたベンチから立ち上がり白羽の前に来る。 ぐしゃぐしゃの汚い顔で僕は白羽に近づき唇にキスをした。 「ふっ、ふぅん…。」 小学生の時とは違う深いキス 息を停めてたからなのか白羽の息は少し荒くなっていた。 「ありがとう。 そして、さようなら。」 そういって立ち去る僕に白羽は何も言わず見送った。 僕は記憶を無くした白羽に2回目のファーストキスをした。

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