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「いった!」
「どうした」
床に頭を押さえて蹲る琴音。
そういえばさっきガンっと派手な音がした。もしかしてぶつけたのか?
「痛い痛い!宗ちゃん!!」
「はいはい」
走ってきた琴音を抱きとめ痛いという頭を撫でてやる。血も出てないし、とりあえずは大丈夫だと思うけれど、痛いと言いながら俺の肩にグリグリ額を当ててくる琴音。
「冷やすか?」
「いらんっ!」
「…何でキレてんだよ」
明らかに怒り口調の琴音に思わず溜息を吐く。
「いったいねんもん!」
「お前の不注意だろ」
「ほら、そんなん言うやろ?もっと心配してえや。こんなに痛い痛い言うてんねんからさぁ!」
知るか。と言ってやりたいところだけれど、こいつの場合はそう言っても逆効果。ただ拗ねるだけ。
「痛かったな、泣かないなんてえらいぞ」
「…何で子供扱いやねん」
「俺から見れば子供だ」
「じゃあ俺から見れば宗ちゃんはおっさんやな!」
ケラケラと楽しそうに笑う琴音。どうやら機嫌はなおったらしい。
「たんこぶ出来たらどうしよ」
「だから冷やせって」
「いらんって」
「意味わかんねえ」
天邪鬼、何でこいつの事を好きだと思っているのか、不思議だ。
「煙草吸いたぁい」
「あそこにあるだろ」
「連れてってぇ」
仕方なく琴音を抱っこしたまま煙草のあるテーブルの方に移動した。
「甘いものも食べたい」
「どんなやつ」
「ドーナツ!あ、でも牛丼もいいな…」
「牛丼は甘くねえだろ」
「今食べたくなっちゃったの」
煙草を口に咥え火をつけた琴音は俺に向かって煙をフーっと吐く。それをする意味、わかってやっているのだろうか。
「牛丼!」
「買ってこさせる」
「やった!なあ、じゃあお礼にエッチさせてあげる」
「お前がしたいだけだろ」
ニヤリ笑った琴音は煙草を指に挟みながら、俺に触れるだけのキスをした。
「宗ちゃんのエッチ、優しくなったから好きやねん」
「…そうかよ」
「前はな、痛かったりしてんけどな、もう全然そんなことないねん。優しくて気持ちいから大好き」
「そんなこと言ってたら今すぐヤるぞ」
「ええよ」
琴音が煙草の火を消して、手をそっと俺の服の裾から差し入れてくる。素肌に触れる琴音の手がやけに温かい。
「俺、宗ちゃん大好きやから、何してもええよ」
琴音の頭のぶつけた部分が痛くないように、ふんわりそこを包み引き寄せる。
キスをして気持ちよさそうに目を閉じる琴音に今日はもう我慢なんて効かないかもしれない。と小さく苦笑を零した。
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