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会う、会わせろ、会わせない 7
ソフトにノックされるからこそ、余計に怖い。何故か焦らされている気がするからだ。
「ねぇつーくん」
「は、はい?」
戸の方をちろちろ見ながら鼓は答える。
「いま、俺つーくんとキスしたいと思ってるんだ。いいかな」
「はい...は、え?え?!」
「あ、はいって言った」
咄嗟のことで、鼓は思わずはい、と言ってしまう。遼介はやった〜!と言いながら鼓に近づいた。
「待っ...っ」
逃げる鼓に、追い詰める遼介。壁まで迫られとうとうここまでか...と諦め目を閉じる。
『すみませーん』
扉のむこうから、声が聞こえた。鼓ははっと現実に舞い戻り、今出ますっと大声を張り上げた。
「あ、ちょ、つーくん」
「あれって、管理人さんの声ですよ」
「違うから待ってっ」
気恥ずかしさから止まることを知らず、簡単にドアを開けてしまった。
「...?」
「はじめまして!涼川 鼓くん!!」
結果はやはりと言うべきか、管理人ではなかった。
「野沢 詩帆でs―」
バァンッと閉じられる扉。風圧で鼓の髪が少し靡 いた。
「...あ」
(え、野沢 詩帆さん?だれ?)
今見たのは何だったんだ?と鼓は困惑する。
「ね、管理人さんじゃないでしょ?」
「そ、うですけど。でも確かに管理人さんの声が」
管理人とは、このかぐら荘を支配...ではなく管理している30代の男性の事務員ことだ。今まで何人もの男を喰いつぶしてきた恐ろしい人物である。
遼介は鼓の髪を触りながら軽めに叱責する。
「しかも管理人さんだったら余計に気をつけなきゃいけないよね?襲われたらどうするの」
「大丈夫ですよ。一度襲われそうになりましたが玉潰す勢いで蹴ったら、「二度と近づきません」って言って逃げ出したんで。その後近づいたら、すっごい勢いで逃げられるんですけど」
「いや一度襲われそうになったってところサラッと流さないでよ」
なんとも言えない顔で遼介は悩む。
「...消すか」
「先輩、ドアスコープからなんか目が見えるんですけど」
遼介の物騒な呟きを諸共せず、鼓はドアスコープを覗いてほしいという。
「...きも」
覗いた遼介はドライバーを持ってきて―ドアスコープに突き刺した。
『殺す気?!?!』
扉のむこうから悲鳴が聞こえた。
(ドア凹んでるし、ドアスコープ壊れてるし。一回修理に出そうかな)
どこまでもマイペースな鼓である。
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