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会う、会わせろ、会わせない 6
後頭部に手を回し、逃げれないようにしてから何度も唇を啄 む。
「は...っ」
(酸欠に、なる......っ)
上唇を優しく噛み、全体を舐める。
遼介が舌を入れそうになった瞬間、鼓は遼介の足を思いっっっ...……きり、踏みつけた。
「ぐっ…」
喉に何かが詰まったような声を出し、遼介は蹲った。鼓ははぁはぁと息を荒くしている。
ちなみに詩帆は柱の陰で鼻血を出して倒れていた。
「なが、すぎる...っ」
「つーくん、思いっきり踏んだね...い、たい」
なんともまぁ、悲惨な状況である。
『やばい、キスした』
『エッロ』
『うわ、うわ...やば、』
『え、え、え...誰かが動画撮ってないのかよ』
『撮ったぞ!』
『『『送れ!』』』
意図せず現場を見てしまったクラスメイトたちの間で、鼓と遼介のキスシーンが出回ったという。
その後、教室に戻った遼介は詩帆に「鼓くんとお話させてください」と土下座されたが、一切聞く耳を持たなかった。
「つーくん、ただいま」
「おかえりなさい、お疲れ様です」
学校が終わり、遼介は部屋に帰った。そして、ニヤけた。
ココ最近、生徒会が多くあり帰る時間が鼓とズレてしまうのだ。最初はその事で不満げだった遼介も、途中からは笑顔に変わった。
その理由は。
「ああ...新婚さんみたい」
部屋に帰って鼓が料理を作って待っててくれるからだった。そう、エプロンを付けて。
「また、それですか。そんなことばっかり考えて...ちゃんと生徒会の仕事してますか?」
「もちろんしてるよ。ただずっと顔に締りがないって言われるけど」
不服だなぁと遼介は頬をかく。
(いやそれ...仕事してないんじゃん)
鼓の突っ込みも的確に、遼介は手を洗ってくると洗面所の方に赴いた。
ところで、ひめみや、みやび荘にはインターホンがあるのだが、ここかぐら荘にはそれがない。そのため来訪を知らせるには戸をノックするしかないのだった。
‐コンコン
「はーい」
遼介のご飯を温めている途中、ノック音が部屋に響いた。
少しの間ノック音が怖くなっていた鼓だが、幾分かマシになったようである。
「つーくん出ないでいいよ」
ノブにてをかけた鼓を制する遼介。
「え、でも」
「いいからいいから。それより、俺つーくんのご飯食べたい」
―コンコン
「ま、あ...先輩がそう言うなら」
―コンコン
―コンコン
―コンコン
―コンコン
―コンコン
―コンコン
(...いやいやいやいや、気になるし怖いよ?!)
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