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幸せな時間は終わりを告げる 1

「ッ」 ガチャ、 パリンッ 「つーくんどうしたの?!」 慌てて遼介が鼓に駆け寄る。 「あ、すみません。大丈夫です」 キッチンの床には陶器の破片が散らばっていた。鼓が食器を拭いている最中、手が滑り過ってコップを落としてしまったのだ。 割れたのは遼介の茶碗。ちなみに、鼓との夫婦茶碗である。 「なんか、不吉」 「そうだね………。俺のだけ買うのもなんだし、一緒につーくんのも割る?今度は大人っぽいのじゃなくてクマとかにしよう」 「そういう発想どこから出てくるんですか」 「ここ」 (うん、指ささなくても頭なのはよく知ってますよ) 結局茶碗は割られなかった。 いつも通り朝食を食べて(誰の仕業とは言わないが、その後鼓の茶碗が割られた)、いつも通り登校して、いつも通り授業を受けて、いつも通り昼食を食べて、そうしていつも通りの放課後。 「涼川様」 古木が畏まって鼓の席へとやってくる。鼓は顔を盛大に(しか)めて嫌そうに椅子を引いた。 「え、何、気持ち悪い」 「本日もご機嫌麗しゅう」 「なに、本気で気持ち悪い」 「折り入ってお願いがあります。勉強教えてください!お願いします!」 (……そう言えば、もうすぐテストが近かったんだ。忘れてた) 勢いよく下げられた頭。鼓はその下げられた古木の頭のつむじをグリグリと抉る勢いで押した。 「す、涼川様?い、い痛いですっ」 「“僕に勉強を教えて貰えるんだよ、これくらい我慢しなよ。それに僕に触ってもらえるだけいいと思え”」 「ひぃぃっ?!」 何か始まってしまった。そして様になっている。 「つーくん帰r、何してるの」 「SMごっこです」 「氷川先輩、俺今日から涼川の椅子になりました。よろしくお願いします」 「“椅子風情が喋らないでくれる?”」 「ああっ、すみません涼川様ァ!お許しを!」 「ふん」 「(なんだこれ)」

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