274 / 437

幸せな時間は終わりを告げる 2

なんだこれ、と再度首を傾げつつ。遼介は鼓の脇に手を入れそのまま真上に持ち上げた。 非常に、軽々と。 「そんな椅子に座っちゃいけません。椅子係なら俺がするから」 「そんな椅子……そんな椅子…」 古木は地味にショックを受けている様子。追い打ちをかけるかのように、鼓が手であっちに行って手と払った。 彼は大人しく立ち上がり教室の隅へ逃げた。それを確認して、遼介に屈んでもらい、耳打ちする。 少し鼓の耳は赤い。 「遼介に椅子係はして欲しくないです」 「どうして?」 「…抱き締めて貰えなくなるからです」 古木を追いやった理由は、これを聞いたら確実に古木が鼻血を出すからだ。 「ふふ、なら仕方ないね。古木くんを椅子係として認めよう」 「よっしゃ!!!……あれ、なんか釈然としない。なんで俺椅子にされて喜んでるんだ……?」 終始首を傾げていた。 遼介に事の経緯を説明すると、図書室が解放されているからそこですれば良いと言う。 もちろん、危ないので遼介もいるという条件付きだが。 「涼川っていつもはどこで勉強してたんだ?」 図書室に向かいながら古木は鼓を見た。鼓は遼介と手を繋いでいて、古木がいつ鼻血を出すかとヒヤヒヤしている。 「大体は部屋だね。自習室だと煩いし、図書室は鷲…?鷲鷹か独占してたから」 「なんで遼介が答えるんですか。あと鷲野です」 「だって俺つーくんのストーカーだったし。ってかそんな名前だっけ?」 鼓は閉口した(嬉しそうである)。古木は静かに親指を立てた。 (ああー、なんか鷲野思い出したら苛立ってきた。結局あいつ何がしたかったのか全然分かんなかったし。部屋に閉じ込めて何しようとしたのか。…………まさか犯そうとしたの?だったら本当に最底辺の糞野郎じゃん、古木の前でとか、見せしめ?本当最悪。気持ち悪いにも程がある。股間潰しとくべきだったかな。あの時遼介が来てなかったら潰せば良かった。二度と会いたくない。ああああ!イライラする!理事長に関しては胃に穴あけ!吐血しろ!) 鼓は、鷲野が鼓自身に好意を抱いていたことを知らない。そのため、未だに鼓の中で鷲野の行動は理解不能となっていた。 鼓の腹黒さが久々に垣間見えた瞬間だった。

ともだちにシェアしよう!