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幸せな時間は終わりを告げる 2
なんだこれ、と再度首を傾げつつ。遼介は鼓の脇に手を入れそのまま真上に持ち上げた。
非常に、軽々と。
「そんな椅子に座っちゃいけません。椅子係なら俺がするから」
「そんな椅子……そんな椅子…」
古木は地味にショックを受けている様子。追い打ちをかけるかのように、鼓が手であっちに行って手と払った。
彼は大人しく立ち上がり教室の隅へ逃げた。それを確認して、遼介に屈んでもらい、耳打ちする。
少し鼓の耳は赤い。
「遼介に椅子係はして欲しくないです」
「どうして?」
「…抱き締めて貰えなくなるからです」
古木を追いやった理由は、これを聞いたら確実に古木が鼻血を出すからだ。
「ふふ、なら仕方ないね。古木くんを椅子係として認めよう」
「よっしゃ!!!……あれ、なんか釈然としない。なんで俺椅子にされて喜んでるんだ……?」
終始首を傾げていた。
遼介に事の経緯を説明すると、図書室が解放されているからそこですれば良いと言う。
もちろん、危ないので遼介もいるという条件付きだが。
「涼川っていつもはどこで勉強してたんだ?」
図書室に向かいながら古木は鼓を見た。鼓は遼介と手を繋いでいて、古木がいつ鼻血を出すかとヒヤヒヤしている。
「大体は部屋だね。自習室だと煩いし、図書室は鷲…?鷲鷹か独占してたから」
「なんで遼介が答えるんですか。あと鷲野です」
「だって俺つーくんのストーカーだったし。ってかそんな名前だっけ?」
鼓は閉口した(嬉しそうである)。古木は静かに親指を立てた。
(ああー、なんか鷲野思い出したら苛立ってきた。結局あいつ何がしたかったのか全然分かんなかったし。部屋に閉じ込めて何しようとしたのか。…………まさか犯そうとしたの?だったら本当に最底辺の糞野郎じゃん、古木の前でとか、見せしめ?本当最悪。気持ち悪いにも程がある。股間潰しとくべきだったかな。あの時遼介が来てなかったら潰せば良かった。二度と会いたくない。ああああ!イライラする!理事長に関しては胃に穴あけ!吐血しろ!)
鼓は、鷲野が鼓自身に好意を抱いていたことを知らない。そのため、未だに鼓の中で鷲野の行動は理解不能となっていた。
鼓の腹黒さが久々に垣間見えた瞬間だった。
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