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幸せな時間は終わりを告げる 14
斯くしてー
病室から抜け出した鼓は強制的に部屋に戻され、遼介も面会時間が終わり2人は引き離されることとなった。
「看護婦さんに、今度夜中に抜け出したら面会禁止にしますよ!って、言っとけって言われたんだけど、涼川また抜け出してたのか?」
午前中に学校からの配布物を届けに来た古木にそう言われ、鼓は不快そうな顔をした。
「知らない」
鼓は検査入院だったため、入院は数日だけであった。今日は退院日である。
入院期間、絶対安静と言われていたにも関わらず、鼓は幾度となく病室から抜け出しこっ酷く叱られていたのだ。
白を切る鼓に、古木はデコピンを1回。
「っ」
「絶対安静だろ!」
「遼介が起きたら真っ先に抱きつきたいんだもん!」
「〜だもんって可愛い!」
「そういうのは遼介に言われたい。古木はなんか変態臭い」
「おいそれどういう意味だよ!」
「そのまんまの意味ですぅ!」
低レベルの言い合いだ。よく言えば微笑ましい、悪く言えば馬鹿。
言い合いつつ数日分の服を鞄に詰め込み、それを鼓が肩にかけようとすると。
それは誰かにヒョイと奪われてしまった。振り返ると、隆盛が荷物を担いでいる。なんと似合うことか。
「異常がなくて良かったが、医者の絶対安静は聞くように」
「……はい」
なんで俺の時はそんな素直じゃないの、と古木は不満そうに呟いた。
(だって古木だし)
歩き出した隆盛に鼓と古木が続く。今日は詩帆が遼介の病室にいる。
「先輩、鞄返してください」
「こういう時なんて言うんだったか。確か、良いではないか〜……だったような?」
「「そんなこと言いません」」
どこの受け売りですかと古木は突っ込んだ。因みに、教えたのは詩帆である。
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