287 / 437
幸せな時間は終わりを告げる 13
side鼓
心臓が未だにバクバクと音を立てていて、足も震えている。……心臓止まるかと思った、てか止まった。絶対止まった。
「すまない、涼川君」
「いえ……大丈夫ですから」
柴先輩がオロオロしているのが珍しかった。
胸のあたりを掴みつつ、眠っているらしい遼介の元へ行く。
「……」
頭に包帯が巻かれていたり顔にガーゼが貼ってあったりして痛々しいけど、確かに眠っているだけみたい。
ほっとした途端、足元から崩れ落ち座り込んでしまった。
「涼川?!」
「ぁ、大丈夫。力抜けた…だけ」
「ビックリさせんな」
「ごめん。
それで、遼介はいつ頃起きるんですか?」
背中に添えられていた古木の手が、固まった。
……なに、その、如何にもな反応は。
眉をひそめて古木を見ると大袈裟に目を逸らされた。違う、顔ごと逸らされた。
野沢先輩を見ると、手で目を覆っている。柴先輩は、口を塞いでいる。再度古木を見れば耳を塞いでいた。
「見ざる聞かざる言わざるだ〜、完璧だ凄い〜!じゃないだろおいコラ」
思わず口が悪くなってしまってわざとらしく咳をして誤魔化した。多分もう無理だけど。
柴先輩だけはこういうのに乗らないと思ってたのに裏切られた気分だった。
「遼介は、いつ起きるんですか」
「えっとね、」
「早く言わないと遼介の耳元であることない事吹き込みますよ」
「お医者さんが言うにはあまりに頭を強く打ったからいつ起きるかの目処は立たないって言ってたよ!!!!!それ絶対遼介起きるからやめて!!」
野沢先輩が叫んで柴先輩に口を塞がれていた。何故かガムテープでぐるぐる巻きにされた先輩を思い出した。
「…………俺のせい、なんですよね」
ぽそり、そう呟くとそれは違うと否定が入った。
「悪いのは犯人であって涼川君ではない」
「でも俺が気づいていれば、」
「気がついていたとしても、犯人は何らかの方法で君を傷つけるつもりだっただろう。もし君の身に何あれば、遼介は自分を許せなくなる。それに遼介も、君が傷つく事は望んでいないはずだ」
………………。
「でも俺にも責任はあるので、切腹した方がいいですかね」
「それ死ぬよ?!」
「話聞いていたか……?」
ともだちにシェアしよう!