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特別だったことを知らされました 7
結論から言うと、遼介の部屋に眼鏡はあった。
しかし入れたのは鼓のみだった。
詩帆は隆盛によって再びソファーに座らせられたため彼と鼓のみで入ろうとしたのだが、大音量で警報が鳴り響いたため大人しく諦めた。
唯一今のところ何も起こっていない鼓だけが遼介の部屋に潜入(?)することになる。
足を踏み入れた鼓が最初に思ったのは、意外という言葉だった。
(遼介のことだからもっとこう、足の踏み場もないと思ったんだけど……。結構綺麗にしてるんだ)
鼓は知らない。
普通の”綺麗な部屋“は壁一面に写真を貼っていないことを。
「俺の写真多いなぁ」
『本当に大丈夫なのか』
『大丈夫な訳ないじゃん!ストーカーの部屋だよ?!』
ドアの向こうから心配する声が聞こえたが、鼓は遼介の部屋に夢中で気づくことは無かった。否、気づかないフリをした。
壁一面に鼓の写真、ベッドに鼓の写真がプリントされた抱き枕。何の気なしに鼓がパソコンを立ちあげれば、そこにも鼓の……寝顔が。
まさしく典型的なストーカーの部屋である。
壁の上部の巾木には、いつの間にか盗ら、拝借されている鼓のシャツや服類。さすがに下着類は置かれていない。それらは、あの今にも壊れそうなほど膨らんだ箱(数個)の中と、見た目異常はないクローゼットの中だろう。
もうこれだけでも、鼓は照れ臭さ、愛されてるななどを感じていたが……あることが気になって仕方なかった。
いや、その前にストーカーの部屋で愛されてると感じるのはどうなのか。鼓だからいいのか。
「……ごめんなさい、遼介」
異常に膨らんだ箱の1つに手をかける。
「……こ、これは…………」
中に入っていたのは、ラベルが貼られた大きめの瓶類。ある瓶には綿棒が大量に、ある瓶には割り箸が大量に、またある瓶にはストローが大量に。
時折中身が黄色い瓶があるが、……鼓はあえて考えないことにした。
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