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特別だったことを知らされました 6
ガチャ
「え、普通に開きましたけど」
「「なんで触った?!」」
生唾を飲んで、それから鼓がした行動と言えば、ノブを捻って開けたことだ。
目をまん丸にした隆盛が鼓を扉から引き剥がす。手に火傷がないか、体のどこにも異常がないかなどを確認し、一息ついた。
今度こそ隆盛は腰が抜けたように座り込んみ、詩帆に至っては鼓に抱きつきよかった!と叫んだ。問題の本人は目を瞬かせる。抱きしめる行為は遼介が居ないからこそ出来ることだ。
居たら……そのあとは想像するに容易い。そうなれば、詩帆は日の目を拝むことが出来るだろうか……?
ある程度落ち着いた頃、隆盛は未だ抱き合っている詩帆と鼓を睨みつけ低く唸った。
「お前ら、2人とも、あとで、説教だ。分かったな?」
「す、すみません……?」
「ごめんなさい」
詩帆は素直に謝ったが、鼓は少し釈然としなさそうだ。開いたんだからいいんじゃないですか、と言いたいのだろう。
しかし、今ここで言えばすぐにでも説教が始まるのは目に見えているため、何も言わないでおいた。……察されているようだが。
「涼川君は遼介が起きた時に報告させてもらう」
「なっ、ちょ!それだけは!」
鷲野事件の際に自分を大切にするように、と怒られた前科ありの鼓。遼介に伝われば次こそ必ず、いや確実に叱られること間違いない。
「反省しなさい」
「……はい」
「じゃあ、扉は涼川君が開けるとして」
「え、大丈夫なの?!」
「この調子だと、涼川君だけ通れるようにしている感じもする」
鼓は胸がキュッとした。
「お、俺だけ……俺だけが遼介の部屋に入ってもいい……」
「そこ、ときめくな」
ビシ、と指さされるが鼓は素知らぬ顔でそっぽを向いた。それを見て微笑んでくれる遼介がいないことを思い出し、鼓は落ち込むのを感じた。
それを知ってか知らずか、詩帆が戯けて、さっきの照れた鼓くん写真に収めれば遼介に恩を売れると思う、と言う。
だが隆盛はそれを予測し、監視カメラどこかについているだろう、と返した。
(ってことは、さっき野沢先輩が俺に抱きついた所も動画に収められてるってこと?………あぁ…)
鼓は無言で詩帆に手を合わせた。無慈悲。
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