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愛されていると分かっていても

キョロキョロと数分辺りを見回したところで、彼は当初の目的をようやく思い出した。 (あ、目的忘れるところだった。眼鏡取りに来たんだよね) いくつか箱を開けていくと時折、いつの間に取ったのだろう……と思われるような代物があったりなかったり。ここでの内容の記載はあえてしないこととする。 そうしてやっと見つけた眼鏡は、黒縁の、つまり鼓が愛用しているものだった。何故か同じように、遼介の眼鏡も入っている。こちらも黒縁。 「…」 無言でそれを手に取り、掛けてみる。 (あれ?度が入ってない?) 度がキツくても、キツくなくてもボヤけるだろうし、と思っていた鼓は拍子抜けしてしまう。それはただのレンズであった。それから不思議に思う。 何故伊達メガネを掛けているのか、と。 (遼介に聞こう) そう何気なく思って、 振り返って、 「……あ」 現状を思い出し、なんとも言えない顔で外した眼鏡を見つめた。 (……遼介が、俺を愛しているが故の行動。それ自体は嬉しい。でも、俺がいなかったら遼介は怪我をすることもなかった) 思考が、深くへ、悪い方向へ落ちていく。 (これは、考えちゃいけないこと) 遼介の眼鏡を、ついでにポケットに入れる。もちろん、自分の眼鏡も手に取ってかけた。 (俺は、) (遼介と) (別れた方が、いいんだろう)

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