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地味な嫌がらせの再開 3

(そう言えば、前に鷲野の時も机の中になにか入ってたよね) 嫌そうな顔をして、鼓は机を否応なしに覗いた。 「…」 そしてスッ、と真顔になると机をずるずると窓の方へ寄せていく。椅子も然り。何を見た。 そうして何をするかと思えば、机を持ち上げ外に放り出そうとするではないか。さっきの(椅子も机も窓から放り出してやる)は本気だったようだ。 ところで、この教室何階だとお考えだろうか。 正解は、 「涼川ストップ!ストーップ!ここ3階だから!!!」 3階だ。 1年生は2階、2年生は3階、3年生は1階である。 机と椅子は合わせて11キログラム程度あり、それがおよそ10メートルの高さ(3階)から落とされたとする。するとどうなるか。 まぁつまり、簡単に言えば。 人に当たると、漏れなく死ぬ。 「やめろって、な?!危ねぇからまじで!!」 「止めるな、古木。これは俺の使命なんだよ」 「意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!」 「机が、椅子が、俺にそうしてくれって縋り付いて来ている」 「幻覚?!とうとう食べなさ過ぎて幻覚見始めた?!いやでも甘味物は食べt、ってそうじゃねぇ!とりあえずやめろ!」 騒ぎを聞き付けたクラスの何人かが急いで詩帆と隆盛を呼んできたことで、ようやっと鼓の暴走は終わった。 現在は空き教室に連行され、正座させられている。中々に珍しい光景だ。 古木は鼓の食生活のことから今回の嫌がらせまで全てを暴露した。その度に、鼓の顔色が3度変わった。 その間に授業のベルが鳴り、全員が遅刻決定を余儀なくされたが。 静かに怒る詩帆の元、誰一人としてそれを言える者はいなかった。 この中で1番怒ると怖いのは遼介か、詩帆か、いい勝負だろう。 全部を話終えると、詩帆は顔を手で覆って唸った。 隆盛は古木と同じようにメモをしている。 「鼓くん、あのね、色々言いたいことはあるけど、まず言わせて」 「……はい」 「ちょっとは俺たちを頼りなさいこの馬鹿!」 初めて馬鹿と罵r…怒られた鼓は目を見開いた。 「ばっ、」 「なんで1人で解決しようとするの!俺たちに言ってくれさえすれば、どうにだって出来たことなんだよ?!」 「そ、れは」 「鼓くんが人を従えるための権力が大嫌いなのは知ってるけど、それでも俺としては、俺たちとしては頼って欲しかったよ。そうしたら遼介にだって会いに行けた、君がそんなに窶れることもなかったんだから!」 口を開いて、また閉じて。 鼓は、何も言えないまま項垂れた。

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