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地味な嫌がらせの再開 4
実は鼓は、罵声を浴びせられることはあっても怒られることなどほとんどなかったのだ。
だから余計に、怒られることに敏感で、怯えている。なぜ怒っているのか、理由が分からないから。
罵声や中傷なら、自分を嫌っているからだとはっきり分かるから。
変な風に、変な所に耐性が着いてしまっているのだ。
詩帆は以前、遼介に言われたことを思い出す。
『つーくんを怒る時は、ちゃんと理由も付けて話して。じゃないと、怖がるから。あと逃げる』
口の開閉を続ける鼓を見て、詩帆はその時は理解出来なかった言葉を今ようやく理解することが出来た。ただただ、怒られ慣れていないのだ。
「…………ご」
「?」
「ご、ごめん、なさい…」
それから、こうも言われた。
『それから、謝れたらちゃんと褒めて。……触られるのは腹立つけど、撫でてもいいから』
それはまるで、当たり前のように親が子にする事のようなことで…。
「素直に謝れるのは鼓くんのいい所だよ、はい、いい子いい子〜!」
ぽん、と頭に手を置いて詩帆は試しにぐしゃぐしゃと撫でてみた。
すると。
「…ヒッ……」
泣いた。慌てふためく詩帆隆盛古木。
「なんで泣くの?!ちょ、ちょ、ちょ、怒られる!遼介に怒られるから!!!」
「先輩の、言い方っがっ…遼介みたいで…っ」
「ああー思い出しちゃったか!よーしよーしごめんねー…」
「す、涼川君?遼介の動画見るか?」
「見ま、すっ」
「涼川、写真見るか?!」
「見るー…っ」
必死に宥められた。
(俺、確実に涙腺弱くなってる。さっきの机に入ってた紙でさえ見た瞬間泣きそうになったのに。
"お前のせいだ"とか…そんなこと、自分でも分かってるつもりだったけど……いざ他の人に言われるときついなぁ)
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