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地味な嫌がらせの再開 5

なんだかんだと宥めすかされ涙が止まった鼓。しかしどこか寂しそうに見えるのは、叱った後はいつも抱きしめてくれる遼介がいないからだろうか。 「鼓くん」 「は、はい!」 呼ばれて飛び上がる。詩帆に悪意はないのだが、少しビビっているようだ。 「そこまでびっくりされるとちょっと傷つくんだけど」 「すみません」 「えっと…?」 詩帆が1歩近づくと、鼓は3歩逃げた。 また1歩、3歩。 そして1歩、3歩。 今度は3歩、鼓は9歩。 (え、嫌われた…) 詩帆の顔が青ざめた。それを見て直ぐに察した鼓が必死に、あの、嫌ってるわけじゃなくてなんとなく気まずくて逃げただけです!と弁明する。 「(なんか涼川怯えてません?)」 「(怒られて萎縮してる…とかか?)」 「(そういえば氷川先輩に怒られて数日間は何されても大人しかったような…)」 「今日鼓くんの部屋に行くけど大丈夫?」 「え、…ま、まだ怒るんですか?」 今度は反対に鼓が青ざめた。まだ怒り足りないのかとビクビクしている。 アフターケアは大切に。 「もう怒ってないからね?!そこまで怯えないで?!鼓くんがちゃんとご飯食べるかどうか確認するためだよ」 「あ…そういう。すみません、ちょっと部屋荒れてるんで片付けさせてください」 「ちょっとくらいなら大丈夫だよ?」 ちょっと所じゃない、というのを先に教えておこう。 鼓は今現在、遼介の方の部屋…つまりみやび荘のリビングで寝ており、そこが居住空間になっている為布団が出しっぱなし。 1度は2人で寝ていた寝室で寝ようとしたものの、虚しくなり却下。 そこで、リビングなら寝室ではないから虚しくないし、遼介の部屋から服等を取ってこれるということで決定。 そして料理の一切合切を放棄していたのでテーブルとキッチン見事に片付けがされておらず、袋やケーキの皿、フォークにスプーン、アイスの棒(何故か当たりが出た)などが散乱している。 時々意味もなくポロポロと泣き出してしまうため、掃除もままならず放置状態。 結論だけいうと。 かなり悲惨。

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