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帰ってきた日常 3
顔を見合わせた鼓と遼介は特に意味もなく微笑みあった。辺りにピンク色が漂い、二人は唇を合わせようとして…
「コラそこーー!周りが倒れそうだからやめなさーい!!」
仕事を終えた詩帆が教室に飛び込んで来たため、敢えなく中断。隆盛もその後からゆっくり入ってきた。
確かに周りは今にも鼻血を出しそうな生徒や気絶しそうなで溢れかえっていた。甘い雰囲気に酔ってしまったようだ。ちなみに古木もなんだかんだ言いつつ鼻血を出しそうな生徒に紛れている。
「古木君大丈夫か」
「ありがとうございますありがとうございます…!もうこの二人ときたらずっとこの調子で俺死にそうで!」
「二人共、古木君をからかいすぎだ」
「喜んでるもん」
「うるせぇ涼川!」
「慶くんこんなにやつれて…かわいそうに。」
「ほんとひど…………え」
嘆くかのように大袈裟に演技をしていた古木が固まった。詩帆を振り返り今俺の名前…と呟いた。詩帆は頭にクエスチョンマークを浮かべる。
「呼んだよ?」
「初めて呼ばれましたぁぁぁぁぁぁ!もう俺の名前誰も覚えてないんじゃないかってくらい呼んでくれなくて!!」
「そういや俺も呼んだことない」
「つーくんは俺の名前だけ呼んでればいいよ」
鼓の顎を上げ自分の方を向けさせる。鼓の顔が蕩けた。しかし詩帆に隙あらばいちゃつこうとする!と注意されたため流石にキスはしなかった。
(遼介に、聞かなきゃいけないことがたくさんある。もちろん俺も、話さなきゃいけないことが山ほど……。でも、ごめんなさい、もう少しだけ待って。臆病でごめんなさい――)
鼓は遼介を見上げた状態で謝罪をした。遼介はその視線に気づき耳に顔を寄せた。
「もう別れたいなんて思わないでね」
「はい」
遼介が昏睡状態であったのはざっと三週間と少し。ほぼ一ヶ月だった。
もうすぐ夏が来る―――
恐怖編 敬具
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