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帰ってきた日常 2
あれから二人の仲はさらに深まり、くっつく頻度も増え人前でキスすることも厭わなくなっていた。
おかげでキスシーンを見た学生数名が鼻血や興奮による失神・転倒により保健室に運ばれる事態となった。しかし二人は悪びれることなく、古木の前でもいちゃつきを見せるのだった。
「はいあーん」
「ん……やっぱり鼓のご飯は美味しいね。病院食どれだけ味気なかったか…」
遼介には専属の医者がおり寮でも診てもらうことが可能だったが、流石に怪我をした部分が頭部だったためそれは叶わず。結局もう一度病院に行き検査入院することになってしまった。
流石に氷川であっても病院食は病院食で、味付けの薄い栄養満点な夕朝食にため息をついていた。遼介は鼓のご飯がどれだけ尊いのかを知った。
そのため帰ってきた遼介が初めに言葉にしたのは、つーくん(ご飯が)食べたい、である。そこで一悶着あったのは、言わずもがな。
「遼介が気に入ってくれるなら嬉しいです」
「俺はつーくんの全てがお気に入りだよ」
「俺も遼介の全部お気に入りです!」
「つーくん可愛いなぁ」
少し赤くなった頬を鼓は両手で押さた。遼介はそんな彼の頭を優しく撫でる。
「ゲロ甘」
突っ伏したまま古木が呻いた。バカップルは彼のことは眼中にないようだ。そして古木はただただ詩帆と隆盛が教室に来てくれることを願う。二人はこの場におらず、生徒会の仕事を終わらせてから鼓達の教室に来る予定だ。何しろ詩帆が残した仕事が積み上がっているのだから…………。
教室の雰囲気もいつも通りになり、和やか(?)である。
「そういや涼川、俺何回かメール送ってるんだけど届いてない?既読つかないんだけど」
「あ、ごめん携帯壊れたままだ…」
「……既読つかなくなって一週間経つ気がするんだけど」
「うん。壊したの一週間前」
「新しいのは?」
「あるけど遼介のしか入れてない」
「なんで?!」
「つーくんは俺の連絡先だけ知ってればいいから」
「元凶そこか…」
仕方なく諦めた古木は、しかしこの後こっそり鼓から教えてもらうつもりでいた。鼓も教えるつもりでいる。今はこうしてべったりな遼介だが、鼓を恋愛対象と見ていない古木を警戒するつもりはない。
つまるところ、ただ揶揄われているだけだ。
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