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第6話 告白 2-2

 鈍った頭で目の前に並んだファイルから青い背表紙のものを抜いた。藤堂が三年であることは青い胸のピンバッチで見て取れた。学年ごとにその色は違う。  記憶を反すうしながらパラパラとページを開く。 「そんなに接点あったかなぁ」  彼が通う二年のあいだで学年の担任にも副担にもなった覚えはない。行事ごともなるべく遠慮させてもらっていた。そう、ここ最近は面倒ごとを避けていたので、それほど頻繁に面識があったとは思えない。 「なんでだろうか」  考えても疑問符が浮かぶばかりだ。 「あ、F組か」  生徒名簿の中から彼の名前を見つけてそれを目で追う。 「見た目通り頭のいい子だ、うん」  担当教科でしか会うことがない生徒たち。せめて特徴を覚えておこうと、ファイルには名前のほかに簡単な情報、コメントを記入している。  彼は常に学年で十位以内に入る優等生だ。特別苦手な教科もないようで器用な性質なのか。 「頭もよくて顔もいいし。実際モテるんだろうけど、複雑な年頃だよなぁ」  自分の投げかけた問いに、困ったように笑った彼の表情が思い起こされる。

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