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第155話 想い 5-3
カタンと音を立てて目の前の戸が閉まれば、藤堂がそれを見計らっていたように僕の頬に顔を寄せた。
「藤堂、突っかかり過ぎ」
「わかってます。でもあのくらいは言っておかないと、また繰り返すんですよあいつは」
腰に回されていた腕を叩けば、逆にそれに力を込めて抱き寄せられる。そして隙間がなくなるくらい身体が触れ合えば、馬鹿みたいに僕の心臓は暴れ出してしまう。顔が熱くて仕方がない。
「藤堂、お前もそろそろ」
鼓動が早くなり無意識に身体を離そうと肩に力が入る。けれどそれを遮るように肩を押さえられ、思わず不満をあらわにした顔で藤堂を見上げてしまった。
「佐樹さん」
「馬鹿、学校で呼ぶな」
「誰も聞いてないです」
「そういう問題じゃない」
先生という敬称から呼び名が名前に変わったことは嬉しいのだけれど、癖がつき学校でなにかの拍子にそう呼ばれてしまってはさすがに困る。しかし咎める僕とは裏腹に藤堂はまったく悪びれた様子もなくこちらを見下ろす。
「佐樹さん、好きです」
藤堂は小さく僕の名前を呟き、後ろから覆い被さるように身を屈める。
「し、知ってる。ちょ、待て藤堂!」
ゆっくりと顔を傾けた藤堂が目の前に迫る。そしてそれがなにを意味するかがわかっていても、口ばかりで動かない自分の身体が恨めしい。
お互いの鼻先がつくほど顔が近づくと、藤堂と目が合い嫌でも顔が熱くなる。至極優しく笑う藤堂のアップに耐えきれず、ぎゅっと目をつむれば、唇に柔らかな感触が触れた。
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