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第154話 想い 5-2

 ほかに担当できる先生もいなかったので仕方ないことなのだけれど、ここまで藤堂の機嫌を損なうとは思わなかった。 「そうカリカリするなよ。俺は仕事が楽になるし、藤堂とセンセはなんの気兼ねもなく毎日会えるんだから」 「お前がいなければな!」  肩をすくめる峰岸に声を荒らげる藤堂の表情はますます険しくなる。しかしこの取り付く島もないくらいの不機嫌さになんとなく覚えがある。ここ最近の記憶を反すうしてみれば、先日三島と交わしていた電話口の会話を思い出した。あの時の不機嫌さも峰岸絡みだったのかと、つい大きなため息がもれてしまう。  本当にそうならば、峰岸は藤堂にとってかなりのトラブルメーカーだ。 「恋愛に障害は付き物だぜ」 「障害どころか有害だ」  顔しかめる藤堂に峰岸は小さく声を上げて笑っている。  僕が記憶整理をしているあいだにも、藤堂と峰岸のやり取りは続いていた。どうも二人をこのままにしておくのは鬼門のようだ。 「峰岸、そろそろ教室行け。また昼に詳しく話は聞くから」 「……」  急かすように慌てて声を上げた僕に少しだけ首を傾げ、峰岸はなぜか藤堂を見つめてから、微かに肩をすくめて息をつく。 「まあ、センセがそう言うならしょうがないな」  そして手に持ったままだったファイルをひらひらと振りながら、峰岸は踵を返して部屋を出て行った。その後ろ姿にドッと力が抜ける。

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