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第153話 想い 5-1

 元々整っている容姿と相まって、峰岸は黙っていれば大人顔負けの落ち着きと雰囲気を醸し出す。けれど実際のところは、幼い子供がそのまま身体だけ大きくなったような性格だ。彼がしでかすことは子供っぽいとは決して言えないけれど。周りはきっとそのギャップに振り回されて手を焼くのだろう。 「峰岸は台風みたいな巻き込みタイプだな」  遠慮も容赦もなく近くのものを巻き込んで、なに食わぬ顔で通り過ぎていく台風。でも過ぎ去ったあとには晴天が広がる。決してこの子も悪い奴ではない。それはこうして接するほどによくわかる。 「あんまり派手に暴れてくれるなよ」  ため息交じりに呟いたら、目の前の峰岸がふっと頬を緩めて笑った。その表情に首を傾げると、急に藤堂の腕に力がこもる。 「あまりこいつには関わらないでください」 「え?」  不機嫌そうな藤堂の声に顔を上げれば、さらにぎゅっと抱きしめられる。もしかしてヤキモチを妬かれたのだろうか。 「残念ながら、俺とセンセはこれからしばらくは一蓮托生」  なあ、センセ。と笑う峰岸に一瞬首を傾げかけて、僕は「ああ、そうか」と呟き返した。ことの発端を思い出して、つい苦笑いが浮かぶ。 「どういうことですか」 「え、ああ、創立祭実行委員会の顧問することになった」  訝しげに眉をひそめる藤堂にそう言えば、途端にその顔が険しくなる。微かに感じる怒りオーラで肌がなんとなくピリピリとする。 「なんでそうなるんですか」 「成り行きで」  さして気にせずそう言葉を返したら、あからさまに呆れられ大きく息を吐き出された。

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